リスキリングとは|DX時代を生き抜くための人事戦略

published公開日:2022.06.23
目次
現代ではデジタル技術の急速な進化により、ビジネスの形が大きく変わっていると言われています。そこで企業から注目されているのが「リスキリング」です。DX時代が到来したことで新たな知識やスキルが求められ、導入を検討する企業は多いでしょう。
本コラムでは、リスキリングを導入するメリットや導入方法について解説しています。

リスキリングとは

リスキリングとはスキルの向上を目的に学び直しを行うことです。2020年1月に開催された世界経済フォーラム(WEF)において、「リスキリング革命」の推進が表明され、日本でも注目が集まるようになりました。

現代は「第4次産業革命」と呼ばれており、これまで人が担っていた業務がロボットの仕事になりつつあります。企業は生産性を上げられる一方で、元々業務を担当していた人材は仕事を失ってしまうことも考えられます。

リスキリングは今後発生する新たな仕事に対応するために、スキルを体得する取り組みです。

リスキリングが注目されている理由

リスキリングは移り変わる業務に対応するために必要であり、アメリカの大手企業が先行して取り組んでいます。
ここでは、なぜリスキリングが注目されているのかを確認しておきましょう。

企業のDX化の推進

リスキリングは企業のDX化の推進を背景に注目されるようになりました。

DX(Digital Transformation)とは2004年にスウェーデンで提唱された「進化し続けるテクノロジーが人々の生活を豊かにしていく」という概念です。日本でも、政府が主導で企業のDX化を推進 する取り組みが始まっています。

テクノロジーの進化が人々の生活を豊かにするに伴って、そのテクノロジーを活用した「新たな価値の創造」が社会から求められるようになりました。しかし、企業ではデジタルに精通した人材が特に不足しており、現状では需要に追い付いていない状態 が続いています。デジタルスキルを持つ人材を採用するのも解決策ですが、社内で育成する方法もあるとして、リスキリングが注目されています。

DX時代で置き去りにされないように、各企業では社員が新たなスキルを獲得することが求められているのです。

人口減少に伴う人手不足

現代の企業にとって、デジタル技術を取り入れて新たな価値を創出することは必須です。しかし、実際のところはデジタル人材が不足しており、需要に供給が追い付いていません。

日本では人口減少に伴って、優秀な人材の確保は今後さらに激化すると予想されています。そうなると、いかにして優秀な人材を採用し確保するかが大きな課題です。今後必要とされる人材を確保するには、膨大なコストもかかるでしょう。

他社と競争して優秀な人材を獲得することもひとつの方法です。しかし、社内にリスキリングの体制を整えて必要な人材を育成できれば、必要なリソースの確保が簡単になります。

SEやプログラマーなどのIT人材だけでなく、マーケティング部門でもリスキリングは必要です。ビジネスの変化に対応するためにも、リスキリングの体制を整えておきましょう。

リスキリングに取り組むメリット

社内にリスキリングの体制を敷くことで、デジタル化によって生まれた業種や職種の人材確保ができます。
リスキリングを導入する前に、取り組むメリットを把握しておきましょう。

業務効率が上がりコストパフォーマンスが向上する

リスキリングに取り組むことで社員の業務効率が上がり、コストパフォーマンスの向上が期待できます。

今後の業務に必要なスキルが身に付けば、業務効率化が可能です。また、リスキリングによって得た技術で業務を自動化できれば、ルーティンワークの負荷を大幅に軽減できる可能性もあります。本来専念すべきコア業務にも力を入れられようになるため、生産性が高まるでしょう。

モチベーションの向上や離職率の低下

リスキリングは社員のモチベーション向上や離職率の低下につながります。

社員は言われた業務を淡々とこなすだけでは、仕事へのモチベーションを感じられません。やりがいのない仕事を続けることは、社員が離職してしまう要因にもなります。しかし、リスキリングを導入して社員に学びの機会を与えれば、働くうえでのモチベーションを上げられるでしょう。
実際にリスキリングの先駆者であるアメリカのAT&Tでは、リスキリングプログラムに参加する社員の離職率が、ほかの社員と比較して1.6倍も低くなっています。
このようにリスキリングで仕事へのやりがいがアップすると、安定した人材の確保も可能です。

教育コストの削減

従来の企業では足りない人材を外部から採用するのが一般的でした。しかし、現代は人口減少によって人材確保の難易度が高くなっています。外部から優秀な人材を採用するのもひとつの方法ですが、採用コストが高くなってしまうでしょう。

社内の適切な人材や希望する人材にリスキリングを実施すると、新人を一から教育する必要がなくなるため、教育コストを削減することができます。 社員にスキルを身に付けさせて戦力の底上げができれば、外部から人材を採用する頻度を下げることができます

リスキリングとOJT、リカレント教育との違い

OJTとの違い

リスキリングとOJTの違いは、新たな仕事に取り組むためのスキルを体得するかどうかです。

OJT(On the Job Training)では現状の部署や仕事を通して、必要なスキルや業務への取り組み方を体得します。これまで日本企業は新しい職場に就いた社員に対して、OJTを実施して業務に必要なスキルを体得させてきました。

一方、今は社内に無いが、将来的に追加されると考えられる新たな業務に取り組むためのスキルを体得すること。
これが「リスキリング」にあたります。

リカレント教育との違い

リスキリングとよく比較される人事戦略にリカレント教育があります。

双方とも「再教育、新たなスキルを身に付ける」という意味では同じですが、企業が主体で行うか従業員が主体で行うかが異なる点です。リカレント教育は従業員が主体となり、社会人枠などで大学に通い学習を行います。必要なタイミングで教育機関に通い、また仕事に戻るのがリカレント教育の特徴です。

リスキリングは業務と並行してスキルを身に付ける点で、リカレント教育と異なると覚えておきましょう。

リスキリングのポイントや進め方

自社でリスキリングを実行する際には、気を付けるべきポイントがいくつか存在します。リスキリングの進め方についても触れながらポイントを紹介するので、導入する前に把握しておきましょう。

スキルを可視化する

体制を整える前に、必要なスキルの可視化を行いましょう。スキルの可視化は以下のような点を明らかにするために実施します。

・社員一人ひとりがどのようなスキルを保有しているのか
・どの仕事にどのようなスキルが必要になるのか

社員が保有するスキルを可視化することで、スキルデータベースの構築やスキルマップの作成が可能です。
新しく生まれる社内の仕事にどのようなスキルが必要かを把握することも忘れてはいけません。業務内で体得したスキル以外にも、趣味で得られたスキルを従業員から自己申告してもらうことも重要です。

第一段階として社員が保有するスキルを把握できれば、リスキリングにより体得が必要なスキルも明らかになります。

対象とする社員や部署を決める

スキルの可視化により、スキルデータベースの構築やスキルマップの作成を行ったら、リスキリングの対象となる社員や部署を決めていきましょう。

リスキリングはやみくもに行うのではなく、はじめは対象者を絞って必要なところに必要なだけ実施します。定期的に対象を変えたり、少しずつ範囲を広げていったりして徐々に対象者を増やし、全体的なスキルの底上げを図ります。

調査によると、日本国内では488万4,000人がリスキリングの対象になると言われています。 そのため、最終的にはリスキリングを通して、全社員のスキル向上が必要になるでしょう。

社外リソースの活用も検討する

リスキリングは社内の人材を上手に活用するための人事戦略です。しかし、スキルを体得するためのコンテンツは社内で用意しなくても問題ありません。企業によって得意・不得意があるため、社内だけで解決しようとすれば教育コストが増える可能性があるためです。

社内に新規業務に関する知見やスキルを持つ人材がいない場合には、社外のリソースを活用することも大切です。
無理に社内のリソースを割こうとせずに、社外の研修等を利用することも検討してください。

社内の人材活用により教育コストを削減できるのがリスキリングのメリットなので、コストパフォーマンスに優れた手段を積極的に取り入れましょう。

最適化しながら継続していく

社内にリスキリングの体制を整えるには、一度取り入れたら継続して実施することが大切です。そのためには、社員の声をヒアリングして問題点を明らかにし、改善し続けなければなりません。

また、リスキリングを継続するにあたって、社員のモチベーションを上げるコンテンツ選びも重要です。目的が曖昧であったり、スキルを体得できなかったりすると、社員のモチベーションも下がってしまいます。

スキルを体得した社員にはインセンティブを設定するなど、モチベーション管理をすることで、社内でリスキリングを浸透させられるでしょう。

リスキリングを推進したいなら研修がおすすめ

日本国内ではまだリスキリングが定着していませんが、大手を中心に社内に体制を整える企業が増えています。リスキリングの体制を整えると企業はこれまでの人材を有効活用でき、従業員の雇用も安定します。そのため、企業と従業員の双方にとってメリットのある人事戦略と言えるでしょう。

社内でリスキリングを推進するのであれば、一から体制を整えても良いですが、外部研修を取り入れるのもおすすめです。
素早く実施できる・準備等を任せられるなど、研修を取り入れるメリットがあります。

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