効果的なOJT研修の実現のために|コラム|人材育成・教育研修

OJTは現場における育成の要です。一方で、そのOJTが「機能していない」ことにお悩みを抱えている企業も多くいらっしゃるのも事実です。今回は、OJTを「機能させる」ための施策の1つとしてあげられるOJT研修を掘り下げ、効果的なOJT研修を実現させるポイントをお伝えします。

効果的なOJT研修の実現のために|人材育成コラム_3

OJTとは?

OJTという言葉はビジネスパーソンの皆様なら、誰もが一度は耳にしたことのある言葉でしょう。
ご存知のとおり、OJTとは「On the Job Training」の略で、経験豊富な職場の上司や先輩が、実際の業務を題材に助言することで、若手社員や後輩に知識や技術を計画的に伝える育成手法です。
ロンバルドとアイチンガーによる研究結果(2002)でも、個人の成長は、その7割が仕事の直接経験から、2割が先輩や上司からの助言によってなされるとされ、OJTは人材育成の重要な手法のひとつであると言えます。
実際、学校法人産業能率大学が2010年に実施した「経済危機下の人材開発に関する実態調査」では、人材開発の方針について、OJT中心か、Off-JT中心かを尋ねたところ、OJT中心に「近い」「やや近い」はあわせて87.4%という結果になりました。この結果からも多くの企業でOJTが積極的に活用されている様子がうかがえます。

OJTとは?|効果的なOJT研修の実現のために|人材育成コラム_3

一方で、OJTを中心とした人材育成を行っている企業のうち、現在OJTが「機能している」と回答した企業の割合は1割強にとどまっています。
では、なぜOJTを「機能させる」ことは難しいのでしょうか?
例えば、当社がよくお客様からお伺いする内容としては、以下の3つがあげられます。

  • ・ OJT担当者の時間の確保が難しい
  • ・ 人材育成の重要性が社内に浸透していない
  • ・ 適切な指導をできる人材がいない

いかがでしょうか。自社に当てはまると思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
上記のような実態をふまえたうえで、OJTを有効に「機能させる」ためには、どのような施策が有効でしょうか?

OJT担当者同士の繋がりを作る、OJT担当者が称賛を得られる機会をつくる、OJTに関する指南書を作成するなど、様々な方法があります。
今回は施策のうちの1つとして、OJT担当者向けの研修についてご紹介していきます。

OJT研修とは?

OJT研修の目的は大きく3つに分けられます。

  • 1. OJTの正しい取り組み方の理解
  • 2. OJT担当者のマインドセットを変える
  • 3. OJTの基本的手法の理解

1. OJTの正しい取り組み方の理解

冒頭でOJTの定義をご紹介しましたが、OJTの大原則はご存知でしょうか?
実は、OJTはとても誤解されやすい育成手段です。例えば、OJTはただ目先の仕事のやり方を若手社員に教えることではありません。しかし、実際には「OJT=目の前の仕事を教えること」という誤った理解をしているOJT担当者がほとんどではないでしょうか。

OJTの大原則は「意図的・計画的・継続的」であることです。

意図的
どのような目的をもってそのトレーニングを行うのかをOJT担当者が理解していること
計画的
しっかりとした育成計画に基づいてトレーニングが行われること
継続的
反復的に、また段階的にトレーニングが実行されること

OJTは場当たり的に実践しても成果にはつながりません。OJTを成功に導くためには正しい取り組み方の理解が不可欠なのです。

2.OJT担当者のマインドセットを変える

まずOJT担当者は自身の業務と並行して育成対象者の育成支援を担当するケースが多く、大きな負担がかかります。そのため適切な意義付けを行わないと、自身の業務を優先してOJTに時間を割かない、あるいは、OJTの目的を理解しないままに場当たり的な指導を行い、OJTが形骸化してしまう恐れがあります。OJT研修ではOJTの意義や、やりがいを伝えることで、OJT担当者のマインドセットの変革を図ります。

3.OJTの基本的手法の理解

OJTは一般的に、以下のステップで行われます。

  • (1) 育成計画の策定
  • (2) 業務の量と質の選定
  • (3) 業務遂行
  • (4) 内省支援

OJT研修では、OJTの推進に必要となる上記4ステップについて理解を深めていただきます。

(1) 育成計画の策定
「意図的・計画的・継続的」にOJTを実践するうえでは、育成対象者にどのような業務をどのタイミングで経験させるかを吟味し、育成計画に落とし込むことが重要です。
育成計画のポイントは、以下3点を明文化することです。

  • ① 部下・後輩にOJTを通じてどのような仕事ができるようになってもらいたいか
  • ② そのために必要な具体的な知識、スキル、経験は何か
  • ③ 上記の状態に到達するために「どのような仕事を/どのように/どのタイミングで」与えるか

(2) 業務の量と質の選定
次に、育成計画に沿ってOJT対象者に行わせる業務の量と質を選定するステップに移ります。OJT担当者は、育成対象者に与える業務の量と質を選定する際には注意が必要となります。なぜなら、もし業務の量・質ともに本人の力量を大幅に超えるようであれば、育成対象者が業務遂行を諦めてしまう可能性があるからです。一方で、育成対象者の力量を大幅に下回るようであれば、仕事への甘えや退屈さを誘発してしまいます。質の高いストレッチな業務とそうでない業務の比率は20:80程度にすることをお勧めします。育成対象者の力量を適切に把握し、任せる業務の量と質のバランスをコントロールしましょう。

(3) 業務遂行
そして業務遂行では、OJT担当者が育成対象者を指導しつつ、実際の業務を進めさせます。具体的には、まず業務の概要や意義を伝え、最初はOJT担当者が行っているところを観察させます。次に、横で見守りながら同じことを本人に行わせます。一通りできるようになったら、最後に本人だけで進めるという手順にします。

(4) 内省支援
最後のステップは内省支援です。内省支援を行うことで、その業務の定着率が飛躍的に高まります。内省支援は「振り返り」と「概念化」から構成されます。「振り返り」では行った業務が成功したか、あるいは失敗したかを確認させ、成功あるいは失敗の理由を探り、その背景となる原因について考察させましょう。
「概念化」では、次に同じ業務に従事する際に活かせる教訓は何かを考えさせましょう。そうすることで次に同じ業務に従事する際にうまくいく確率が高まり、また類似の業務への適用力も期待できます。

OJT研修の対象者

ここまでOJT研修の3つの目的と、それぞれの詳細についてお伝えしてきました。では、OJT研修はどなたに参加していただくと有効でしょうか。
OJT研修の対象者は、主に以下の通りです。

  • 1. OJT指導を実際に担当する先輩・若手社員
  • 2. 管理職(OJT担当者の上司)

OJT担当者が理解を深める目的で参加することはもちろんですが、その上司にあたる管理職も適切なOJTが実践されているのかをモニタリングするために、基本的な取り組み方を理解しておくことが重要です。

OJT研修のメリット・デメリット

先程もお伝えしましたが、OJTを有効に「機能させる」ための施策は多々あります。中でもOJT研修を実施するメリット、デメリットは何でしょうか?

メリット

OJT研修を行うメリットは、将来、マネジメントやリーダーシップを発揮する際の予備知識が蓄えられるという点です。その他には通常業務以外に新たな役割を担うOJT担当者へのマインドセット変革、社内ではレクチャーが難しい体系的なOJTの手法の理解などがあります。

デメリット

OJT研修のデメリットは、もし企業で確立された人材要件があり、それをOJT担当者が理解していない場合、研修内で立案された教育計画が自社に適さない可能性があります。
企業として確立された人材要件がある場合、OJT研修に参加させる前にOJT担当者に人材要件を理解させておきましょう。

その他にも、OJTに関する本からのインプットに比べ、研修は時間と場所の制約がかかることもあげられるでしょう。

OJT研修によって獲得できるスキル

OJT研修では、OJTの推進に必要となる4ステップについて理解を深めていくとお伝えしましたが、OJT研修に参加することによって獲得できるスキルはどのようなものがあるのでしょうか。
OJT研修によって獲得できる主なスキルは以下の通りです。

  • ・ 伝達力
  • ・ ヒアリング力
  • ・ 論理的思考力
  • ・ 計画策定力
  • ・ 概念化力
  • ・ コーチング
  • ・ ティーチング
  • ・ 労務管理
  • ・ 伝達力
  • ・ ヒアリング力
  • ・ 論理的思考力
  • ・ 計画策定力
  • ・ 概念化力
  • ・ コーチング
  • ・ ティーチング
  • ・ 労務管理

OJT研修のポイント

最後に、OJT研修の効果を高めるためのポイントを見ていきましょう。

1. OJT担当者を決め、レディネスの形成を行う

レディネスとは学習の成立にとって必要になる「前提知識や経験」「心身の準備性」のことを言います。体系的なOJTを行っていく上で、当然、OJT担当者を選出した理由やOJT担当者に期待する役割があるはずです。
人事担当者や管理職(OJT担当者の上司)は、OJT担当者をOJT研修に送り出す前に、これらの理由や期待を適切に担当者に伝え、レディネスの形成を行うことが求められます。

2. 若手社員の傾向を理解する

OJT研修の効果を高めるために、育成対象者である若手社員にどのような傾向があるのかをOJT担当者に理解させることは重要です。特に、昨今の新人は「自動ブレーキ型」や「経験前の学習」と言われるように、「言われたことは確実にこなす一方、失敗を極端に恐れ、不安があると行動に移せない」といった傾向が見られます。
例えば任せた仕事の難易度が育成対象者にとって高い場合、育成対象者はOJT担当者に失敗したと認識されるのを恐れ、相談に来ない可能性が出てきます。そのため、OJT担当者は積極的に育成対象者と関わりを持ち、心理的安全性を高めることが重要です。万が一失敗した場合でも、相談しやすい関係性の構築が求められます。
OJT担当者が若手社員の傾向を理解することは、育成対象者との適切な関わり方を理解させるきっかけとなります。

3. ワークショップやケーススタディを入れる

OJT研修内においてワークショップやケーススタディを組み込むことによって、研修参加者の学習定着率が向上します。ワークショップは、自分の知識や経験を振り返り、思考する良い機会になります。
OJT研修では、例えば教育のゴール設定や教育計画の策定、それに伴う業務の選定などをワークショップで考えさせると良いでしょう。

また、ケーススタディは「現実に起こりうるケース」を用意し、研修参加者に思考させ、アウトプットさせることで、行動のイメージをつけさせます。
例えばOJTの現場でよく起こりうる失敗例や、内省支援の手法などをケーススタディとして扱うと良いでしょう。

ワークショップ、ケーススタディをうまく活用し、研修の効果を高めていきましょう。

4. OJT担当者の内省を行う

OJT研修で知識を学んだのだから、あとはOJT担当者だけに任せればよいかというと、そうではありません。管理職(OJT担当者の上司)がOJT担当者自身の内省を支援することも重要なポイントです。
OJT担当者がOJTを通じてどのような成功、失敗をし、そこから何を学んだのかを振り返る機会を、管理職が意図的に設けていきましょう。

ただし、あくまで指導ではなく支援ですので、管理職のモノの見方や考えを押しつけるのではなく、良質な問いかけを行いOJT担当者の思考を促すことが重要です。また、OJT担当者が自己の振り返りをする際には、OJT研修のテキストを見返すことを推奨してあげることも、気づきを促すうえでは有効でしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。 本コラムでは「意図的・計画的・継続的」にOJTを実践するために有効な、OJT研修についてご紹介しました。OJTは、若手社員の成長、ひいては組織力の向上につながる非常に重要な取り組みです。今回ご紹介した内容を参考にしていただき、OJT研修をうまく活用してOJTを成功に導いてください。

参考文献
  • 学校法人産業能率大学「経済危機下の人材開発に関する実態調査」
  • Michel M. Lombardo,Robert W.Eichingar(1996) Career Architect Development Planner,Lominger

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