傾聴とは?|円滑に信頼関係を築くためのコミュニケーション技法

published公開日:2023.04.18
目次

傾聴は相手との良好な信頼関係を築くために欠かせないコミュニケーションの技法です。話を聞くテクニックはビジネスシーンでも活用でき、ビジネスパーソンにとって必要なスキルの1つとされています。

本コラムでは傾聴とはどのような技法か・ビジネスにおける傾聴の使い方について解説しています。傾聴の具体的な活用例も紹介しているので、ぜひお役立てください。

傾聴とは

傾聴とは、相手に対して共感・理解を示すコミュニケーション技法です。相手の話を深く聴いて理解を示すことで、円滑なコミュニケーションにつなげられます。

まずは傾聴の意味・目的と傾聴に欠かせない3原則を確認してみましょう。

傾聴の意味・目的

傾聴とは相手の話に関心を持ち、共感を示しながら「聴く」ことです。ただ漠然と相手の話を耳に入れる「聞く」とは異なります。

傾聴を行う目的は、相手が伝えたいことにフォーカスを当て、積極的に相手を理解することです。傾聴では耳だけで話を聞くのではなく、目で相手の表情を伺いつつ、心で言葉の裏に隠された感情も追わなければなりません。

傾聴を活用したコミュニケーションでは相手もこちら側を理解してくれるようになり、良好な人間関係をスムーズに築けます。

傾聴の3原則

1.共感的理解 (empathy, empathic understanding)

共感的理解とは、どんな状況でも相手の立場になって共感しながら話を聴く態度のことです。「話し手」と「聴き手」が異なる人間であることを前提とし、言葉の裏にある心情の理解に徹しましょう。ただし、相手に共感の気持ちを伝える際には、「共感」と「同情」を混同しないように注意してください。

話を聴く際には相手の立場を自分に置き換えて、相手の言葉を受け入れる必要があります。また、共感と言っても、「かわいそう」などと相手の話に同情するのではありません。あくまでも相手の気持ちに寄り添って、話を聴く姿勢が重要です。


2.無条件の肯定的関心 (unconditional positive regard)

無条件の肯定的関心とは、相手が話す言葉に対して肯定的な関心を示しながら聴くことです。

ここでは会話の内容について、善悪の判断や好き嫌いなどの評価を行ってはいけません。まずは無条件に相手の話を受け入れることが大切です。相手の話をストレートに受け入れることで、話し手の心に安心感が生まれ、どんな話題でも話しやすくなるといわれています。

無条件の肯定的関心ではお互いの意見が一致していなくても、相手の発言に対して批判するような態度は取らないようにしましょう。


3.自己一致 (congruence)

「自己一致」とは、聴き手である自分自身と相手に対して、真摯な態度で言葉の真意を把握することです。

真摯に話を把握するために、相手の話に不明点があったときはそのままにせず「わかりにくい」ことを伝えます。わからないままにしておくのは真摯な態度とは一致しないためです。

自己一致の原則に沿ってコミュニケーションを行う際には、会話の内容を正しく理解することが重要です。言葉の真意を把握するためにも、聴き手と話し手の間に認識のズレがない状態を目指してください。

傾聴するときの心構えや姿勢

傾聴するときの適切な心構えや姿勢を理解できていなければ、効果が発揮できずコミュニケーションを円滑に進められません。以下の4つの心構え・姿勢を把握しておきましょう。

  • 1.聴くが8割、話すが2割というスタンスで
  • 2.姿勢で相手に興味があることを示す
  • 3.相手の言いたいことを理解する
  • 4.繰り返し確認する

1. 聞くが8割、話すが2割というスタンスで

傾聴は相手に対して話しやすいと感じさせるためのコミュニケーション技法です。相手の話に耳を傾けて、言葉の裏に隠れた真意を引き出さなければなりません。

そのため、聴くと話すのバランスは、聞くが8割、話すが2割がベストであるといわれています。 傾聴では相手を会話のメインに置くことが重要です。聴き手は相手の言葉を共感・理解することに徹して、適度に相槌を打つのがよいでしょう。

2. 姿勢で相手に興味があることを示す

傾聴を実践する際には、話を聴く姿勢で相手に興味があることを示しましょう。なぜなら、聴き手の態度は相手が話す意欲や、話しやすさに大きな影響を与えるからです。

例えば、腕や脚を組んでいたり、背もたれに身を預けすぎたりしていると、話し手に対して居丈高な印象を与えてしまいます。「この人は真剣に話を聴いてくれそうにない」と感じられてしまうと、相手の真意を引き出せません。

会話中は相手への関心を態度で示し、相手の目も見て傾聴を実践しましょう。

3. 相手の言いたいことを理解する

傾聴を実践する目的は、相手の言葉の裏にある真意を理解することです。話を聴く際には、相手の立場に自分を置き換えて聴かなければなりません。また、耳から得られた情報だけでなく、目や心を使って情報を整理してください。

例えば、話し手の声や表情、しぐさなどから、相手がどのような気持ちで話しているのかがわかります。これらはすべて、相手の言いたいことを理解するのに役立つ情報です。

傾聴の実践では言葉のストレートな意味だけでなく、心情からも相手を理解するよう心がけましょう。

4. 繰り返し確認する

傾聴する際の繰り返しには2種類あります。1つは話し手との認識をすり合わせるための繰り返し確認です。「今の話はこういうこと?」と要所ごとに確認し、認識の擦り合わせを行いましょう。これは、傾聴の3原則の1つ「自己一致」のためでもあります。

もう1つが、共感を高める繰り返しです。相手の言葉をそのまま、もしくは同じニュアンスの言葉で繰り返し伝えることで「共感しているよ」ということを姿勢で伝えましょう。「昨日はミスをしてしまって気持ちが沈んでしまいました」「そうか、気持ちが沈んでいたんだね」というように、話し手が言ったことをそのまま使って相槌を打ちます。

この繰り返しによる確認は、2種類とも「ちゃんと話を聴いてくれている」と相手に安心感を与えます。相手の気持ちを理解して、話しやすい環境を作ってあげましょう。

ビジネスにおける傾聴の使い方

傾聴はビジネスを円滑に進める際に有効なコミュニケーション技法です。ここではビジネスで傾聴力が求められるシーンと、傾聴を活用した具体例について紹介しています。

ビジネスで傾聴力が求められるシーン

職場の人間関係を構築するとき

傾聴が身につくと、円滑に職場における人間関係の構築が行えます。傾聴を活用したコミュニケーションは、上司・部下などの立場に関係なく有効です。

傾聴では相手の立場になって考え、相手の言葉に共感しようと努めます。そのため、相手をより深く理解することになり、信頼関係が強固になるのです。

現代社会において、職場で感じるストレスの多くが人間関係によるものとされています。原因の1つには、人間関係が築けていないことも挙げられるでしょう。傾聴により人間関係が円滑に構築できれば、団結力が上がり企業にとっても大きなメリットとなるはずです。


クライアントや消費者との信頼関係を構築するとき

社内だけでなく、社外においても傾聴は役立ちます。例えば、クライアントとの商談において相手が何を求めているのかを傾聴によって把握し、先回りの提案をすることで担当者や自社への信頼が上がります。

また、消費者と直にやり取りする機会の中で、言葉の裏にあるニーズを聞き出してプロダクトにすれば、ニーズをわかってもらえた!と信頼してもらえます。

クレーム対応でも同様です。相手の話を聞いて、要望を聞き出して対応することで、怒りを収めてもらうのはもちろん、「真摯に聞いてもらえた」ということで信頼感が増します。

さらに、相手の要望を汲み取る中で新たなビジネスチャンスが見つかることもあるでしょう。

活用の具体例

傾聴は人間関係の改善・修復に有効です。ここでは傾聴を活用して問題解決をした事例を紹介します

こじれてしまった同僚との人間関係を改善したケース

ある女性は仲が良かった同僚に対して発言した一言により、人間関係がこじれてしまいました。人間関係がこじれてしまったのは、発言に対するお互いの認識のズレが原因です。

このままではいけないと思った女性は、相手の話を徹底的に聴く傾聴を実践します。

相手の本音を聴きつつコミュニケーションを取ったことで、お互いに誤解や勘違いがあったことが判明。2人の人間関係は無事に修復でき、10年以上経っても定期的に連絡を取り合うまでに回復しています。


傾聴がクライアントの成長に良い結果をもたらしたケース

傾聴はカウンセラーやコーチも活用するコミュニケーション技法です。

あるコーチは「どうすればよりクライアントをサポートできるのか」と悩んでいました。その時に傾聴と出会い、すぐに実践を始めます。

コーチングに傾聴を取り入れたことにより、クライアントはコーチをより信頼するようになりました。それまで、コーチという立場上、一方的にクライアントを指導するばかりでクライアントからは「自分のことを考えてくれない」と思われていた状況が、傾聴の姿勢を見せることで改善されたのです。クライアントは「話を聞いてくれる」コーチに対し、それまで以上に悩みを打ち明けるようになり、コーチのもとにはクライアントの情報がこれまで以上に集まるようになりました。

コーチングでの傾聴実践により、クライアントはコーチを信じることができ、コーチはクライアントからより多くの悩みや気持ちを知ることで、それをコーチングに実践。結果、急速なスピードでクライアントは成長を遂げました。

傾聴力の身につけ方や効果的な聞き方

傾聴は一朝一夕で身につくスキルではありません。コミュニケーションを取る際には普段から意識すること、ロールプレイングなどの練習を実施することなどが重要です。

また、傾聴を実践する際の効果的な聴き方についても理解しておきましょう。

練習をして傾聴力を付ける

傾聴スキルを身につけるには、人材育成の一環としてロールプレイングを実施するのがおすすめです。ロールプレイングを実施する際には、聴き手・話し手・採点者・タイムキーパーの4つに役割を分担しましょう。

制限時間を設けてタイムキーパーの管理のもと、実際に聴き手と話し手が会話を行います。制限時間を超えたらタイムキーパーに、話し手が会話の8割を話していたかを確認してください。

また、話し手と採点者は、傾聴のポイントが掴めていたかを聴き手にフィードバックしましょう。

相槌を打つ

傾聴を実践する際には、適度なタイミングで相槌を打ってください。話し手の動作や感情の変化に合わせて相槌を打つことで、話の内容に共感していることを示せます。

しかし、相槌を打ちすぎると「真剣に話を聴いてもらえていない」と逆効果の印象を与えます。

傾聴の目的は相手の気持ちに寄り添って、相手を深く理解することです。形だけの相槌は打たずに、話し手の反応を見て相槌を打つタイミングを伺いましょう。

質問をする

傾聴では受動的に相手の話を聴くのではなく、相手の発言から真意を引き出すことが重要です。真意を引き出すためには、話の合間に質問を上手く挟みましょう。

質問にはYes/Noで答えられるクローズドクエスチョンと、それ以外のオープンクエスチョンがあります。クローズドクエスチョンは回答者の負荷が低いですが、多用すると誘導的になりがちです。

会話が続かないときには、オープンクエスチョンで相手の発言を引き出すのがよいでしょう。

傾聴力はビジネスパーソンに必須のスキル

傾聴は相手の真意を引き出すことを目的としたコミュニケーション技法です。傾聴スキルが身につけば、日常生活からビジネスシーンまで役立ちます。相手の話を聴いてニーズを引き出すビジネスパーソンにとって、幅広い仕事をこなすために必須のスキルといえるでしょう。

傾聴は先天的なスキルではなく、訓練によってビジネスに必要なレベルまで伸ばせます。傾聴力を身につけて、良好な人間関係や職場環境にしていきましょう。

ALL DIFFERENT株式会社では、「傾聴力の基本研修」や「傾聴と同様に必要な、読解力についての学び」を提供しています。社員の傾聴力を向上させたいご担当者は、ぜひご活用ください。

傾聴力の基本研修の詳細はこちら
読解力についてのコラムはこちら

また、傾聴力を高める下記の研修もございます。合わせて、ご利用をご検討ください。

【基礎】ポジティブ・リスニング研修の詳細はこちら
質問力の基本研修の詳細はこちら