新入社員の現場教育|OJT制度を"短期的に"機能させるポイントとは?

現場での実践を通じて知識やスキルの習得を図る「OJT」。新入社員の早期立ち上がりに必要不可欠な教育方法として多くの企業がOJT制度を導入していますが、「うまく機能していない」とお悩みの人事・教育担当者が多いのが実情のようです。
本コラムでは、OJT制度を機能させるポイントをご紹介します。

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新入社員の現場教育|OJT制度を
目次

"長期的"か"短期的"かで変わるOJT制度を機能させるポイント

OJTとは、「On the Job Training」の略称で、職場での実践を通じて業務知識を身につけさせる手法のこと。新入社員の育成施策として、OJT制度を取り入れている企業がほとんどでしょう。しかし、現場の声に耳を傾けると、「しっかりと教えているのに全然育たない」「去年の新人と比べて効果が出ていない」などのお悩みが聞こえてきます。

その背景には、人事と現場の役割分担ができていない、育成目標が定まっていない、また場当たり的な育成施策が走っているなど様々な原因がありますが、実は教育係であるOJT担当者の「教え方」に要因があるケースが多いのです。そのため、部下の育成法を学ぶ研修を取り入れ、指導者としてのスキルアップを図っている企業もたくさんいらっしゃいます。

もちろん、「教え方」を教えることは、新入社員にとっても本人にとってもプラスになるため、長期的に見て必ず実践したい取り組みです。しかし、「今年のOJTを機能させたい」「新入社員の配属まであと1カ月しかない」というように、短期的な視点で見たときには別の考え方が必要になってきます。

短期的な視点では「OJT担当者選び」が成果を左右する

当社では、OJTを短期的に機能させるための最適解は、OJT担当者の人選を適切に行うことだと考えています。OJT担当者を決める際、「今年は各課の課長にお願いしよう」「この業務が得意なのは山田さんだから彼にお願いしよう」というように、役職や業務スキルの高さで決めているケースが多いのではないでしょうか。

しかし、「教え方がうまい」のと「役職・業務スキルの高さ」はイコールではありません。基本的なOJTの流れ、つまり「①適切な業務のアサイン」「②業務の説明」「③業務実行時の適時適切な支援」「④業務の振り返り」という4つのサイクルをうまく回せるか否かで判断すべきなのです。

OJT担当者に必要なのは「言語化力」と「対話力」

では、このサイクルをうまく回せる人とは、どんなスキルを持った人なのでしょうか。OJT担当者に求められるスキルを3つにまとめると、仕事の目的や内容をわかりやすく説明する「言語化力」、振り返りで自身の強みや課題に気づかせる「対話力」、そして「業務に関する知識・スキル」と表すことができます。

とはいえ、3つ全てが"完璧な"社員はそうそういないもの。入社したての新入社員の業務知識・スキルが高いことはまれであり、また、いきなり高い知識・スキルが求められるケースもまずないことを踏まえると、言語化力と対話力の2つをより重視し、人選を行うのが大きなポイントです。完璧でなくても言語化力や対話力が"そこそこ"あれば、よくある「あいまいな指示で新入社員が混乱してしまう」「一方的な決めつけで新入社員のモチベーションが下がってしまう」といった事態を避けることができ、効果的なOJTにつながっていきます。

効果を高めるOJT実践法

適切な人選のもと、先ほどご紹介した①~④のサイクルを回してOJTを実施していくことで、確実にOJT制度は機能していくでしょう。ここでOJTの実施に当たって押さえておきたいポイントをいくつかご紹介します。

  • (1)OJTのゴールを設定する
  • (2)OJTのゴールに沿った業務を付与する
  • (3)育成対象者のレベルに合わせた任せ方を意識する
  • (4)業務完了後の振り返りを仕組み化する

(1)OJTのゴールを設定する

1つ目のポイントは、「誰に」「いつまでに」「どうなってほしいのか」という具体的なゴールを設定することです。明確なゴールがないと、改善点や良かった点が見えてこず、また人によって指導内容に差異が生じ、育成対象者の成長にばらつきが出てしまう可能性が高まります。ゴールを設定する際は、理想的な社員や求める人物像から逆算する、人事制度に紐づけて考えていくことをおすすめします。

(2)OJTのゴールに沿った業務を付与する

設定したゴールに沿って業務を付与することが2つ目のポイントです。一般的に、担当業務をルール・基準に基づき、1人で、かつ納期内に求められる品質で完遂できる状態になれば、新入社員が"ひとり立ち"できたといえます。この状態を人材育成の分野では「定型的熟達化」と呼んでいます。まずは、ゴールに沿った業務を上司・先輩のサポートを得ながら進め、その次のステップとして定型的熟達化の状態を目指すとよいでしょう。

(3)育成対象者のレベルに合わせた任せ方を意識する

育成対象者の理解度や習熟度に合わせた任せ方を意識することが3つ目のポイントです。特に新入社員に対しては、なぜその業務を任せるのか「①業務の目的」を伝え、次に「②業務を通して学んでほしいこと」「③業務を進めるうえでの注意点」を伝えることで、「④育成対象者の懸念点を払拭する」必要があります。そのうえで、「⑤進め方・やり方を確認する」という5つのステップで任せることが大切です。こうすることで、育成対象者が"作業をこなす"のではなく、その業務が自分の成長にどう役立つかを理解し、納得して取り組むことができるようになるため、より早い成長が期待できます。

(4)業務完了後の振り返りを仕組み化する

4つ目のポイントであり、最も重要なポイントともいえるのが「振り返り」です。はじめのうちは「17:30から30分/毎日」などと設定し、振り返りを仕組み化することで習慣化を促しましょう。振り返りの中身としては、「詳細に出来事を思い出させる」「言語化させる」ことが必須です。成功体験を言語化することでモチベーションアップにつながったり、ミスした場合はどこに問題があったかを考えることで成長につながったりと、様々な効果が期待できます。また、日報や週報を活用して、記憶ではなく記録として残すことで、振り返りをスムーズに行うことができます。

長期的な目線での担当者育成も忘れずに

今回のコラムでは、OJTを短期的に機能させるポイントとして、適切な担当者を選ぶことの重要性や指導者として求められるスキル、またOJTを実施する際に押さえておきたい要素を見てきました。ここで忘れてはならないのが、OJT担当者として選んだ社員の言語化力や対話力が"そこそこ"高いからといって、そのまま放っておいてはいけないということです。

言語化力や対話力というのは、自分一人ではなかなか向上させられないもの。また、どちらのスキルも、OJT担当者としてだけでなく普段の業務にも必要な力であるため、長期的に見て必ず高めておきたいスキルです。その土台となる、論理的思考力や要素分解力、コミュニケーション力といった知識・スキルは、研修をはじめとした適切なサポートを行うことで高めていくことができます。OJTを担当する社員のスキルアップ施策も取り入れることで、短期的にも長期的にも機能するOJT制度を実現していきましょう。

なお、指導者としてのスキルアップを図るOJT研修の取り組みについては、掲載中のコラム『OJT研修とは?意味・目的と効果的に進める方法を紹介』で詳しく解説していますので、そちらを参考に実践してみてください。

付録「テレワーク時の注意点」

コロナ禍でテレワークが急速に普及し、今の時代のOJTは必ずしも「隣について指導する」という環境にありません。そのため、新入社員のモチベーションが下がっていないか、何か悩んでいないかなど、顔色を見て判断することが困難になっています。そうした状況下では、次の3つのキーワードを意識して指導に当たることをおすすめします。

  • キーワード(1)受動と能動
    新入社員が携わる仕事は大きく、上司・先輩から振られる「受動的な仕事」と、自ら考えて行う「能動的な仕事」の2つに分けられます。当然、入社したばかりの新入社員に能動的な仕事だけを与えるわけにはいかず、かといって受動的な仕事ばかりではモチベーションを保つことはできません。テレワーク中は、新入社員の状態を確認することが難しいため、受動的な仕事と能動的な仕事の割合を考え、業務を管理していきましょう。新入社員の業務内容を洗い出し、「これは受動的な仕事、これは能動的な仕事」というように分類してみると、業務の割り振りがスムーズに進みます。

  • キーワード(2)事実と感情
    コミュニケーションが制約されるテレワーク環境下では、報連相や振り返りを行う際、事実確認を優先しがちになってしまいます。そのため、新入社員の感情面を意識的に確認する必要があります。事実として報告しているのか、感情として報告しているのか、分けて報告させるとよいでしょう。

  • キーワード(3)集中と緩和
    テレワーク環境下では、業務に集中しやすい反面、ちょっとした雑談も含め上司・先輩や同期との関わりが減ってしまい、リラックスの仕方が個人任せになってしまいます。例えば少し難易度の高い仕事に対して「1時間で終わるようしっかり取り組んでね」、逆に1時間もかからずこなせそうな仕事でも、「1時間使っていいからね」というように、緩急のバランスを取って業務を依頼・管理することが大切です。

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