成果を上げている上司が「フィードバック」時にやっている5つのこと部下の成長を加速させる方法とは

update更新日:2022.05.27 published公開日:2019.11.19
目次
「部門によって人の成長にばらつきがある」という悩みをよく耳にします。社内で同じような育成を行っているにもかかわらず、成長にばらつきが生じてしまうのはなぜでしょうか?もしかしたらその原因は、上司が部下に行うフィードバックの中身や方法にあるかもしれません。 本コラムでは、なぜフィードバックがうまく機能しないのか、その理由を探りながら効果的なフィードバックを行うポイントをご紹介します。

フィードバックの意味とは

「フィードバック」と聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか?上司からのアドバイスや改善策の提示、ダメ出しや小言など、人によって捉え方はさまざま。フィードバックの意味と意義を正しく理解して実践している人は、意外と少ないのではないでしょうか。

広辞苑ではフィードバックを「(前略)結果に含まれる情報を原因に反映させ、調節をはかること」と定義しています。ビジネスや人材育成の分野では、上司から部下へ業務上の改善点を伝えるための手法を指す言葉として「フィードバック」が用いられています。

当社では、「上司が部下と対話することで、部下の成長を促すこと」、つまり「部下に自身の状態を伝えたうえで、改善を支援すること」をフィードバックと呼んでいます。

コーチングとの違い

コーチングは、部下が目標を達成するためのサポートを指します。行う内容としては、質問と傾聴です。部下に対してさまざまな角度から質問をしてその回答を聞き、目標達成に向けて部下自身が考えて行動できるようにします。

フィードバックが起こった事象に対してアドバイスや改善点を「伝える」のに対し、コーチングは「聞く・聞き出す」ことで成長を促す点が異なります。

注目されるようになった背景

ビジネスにおけるフィードバックの必要性が高まったのは、以下のような時代背景があるためです。

  • (1)働き方や価値観の多様化
  • (2)上司と部下のコミュニケーションロス、ミスコミュニケーション
  • (3)上司の指導力不足

(1)働き方や価値観の多様化

正社員として1つの企業に長く勤めることが当たり前とされた時代ではなくなり、派遣社員や非正規社員、フリーランスなど、雇用形態が多様化しているのが現代です。さらには、リモートワークやテレワークなど、「出社する」ことさえ当たり前ではなくなってきました。

また、グローバル化にともなって、仕事に対する価値観も多様化しています。がむしゃらに働いてお金を稼ぐ・キャリアアップするといったことよりも、私生活を充実させる・より自分の実力を認めてもらえる会社に行くといった人も増えています。

そうした「人材の流動性」が高まったことで、当然、企業にとっては「優秀な人材の確保」の重要度もこれまで以上に高まっています。フィードバックにより、やりがいや成長、キャリアアップといった魅力を伝えて、自社で長く働いてもらいたいと注目が集まっています。

(2)上司と部下のコミュニケーションロス

特に人材が不足している企業では、上司自身がプレイングマネージャーであることがほとんどでしょう。すると、部下のマネジメントに割ける時間が少なくなり、コミュニケーションロスやミスコミュニケーションが発生します。

つまり、上司は短い時間の中で的確にアドバイスを行う、フィードバックスキルが求められているのです。また、フィードバックの機会そのものがコミュニケーションの機会にもなることも忘れてはいけません。フィードバックをおろそかにすることは上司と部下の関係性を脆弱にし、組織力を弱体化させる危険性があることをしっかり認識しておきましょう。

(3)上司の指導力不足

近年、年功序列型の組織が多かった日本企業にも、実力主義型の組織が増えてきていると言われています。そんな実力主義の企業では、営業成績や会社への貢献度合いによって年齢に関係なく昇進します。特に若い人は部下を持った経験が少ないまま役職が上がるケースも多く、指導力不足に陥りがちであると言われます。

年上の部下を持つことも少なくなく、年齢を気にしてどのように指導すれば良いかが分からない場合もあるでしょう。

しかし、改善点がある部下を放っておくのは、会社にとっては損失でしかありません。そこで、相手に改善点を伝えるフィードバックが有効とあって、的確なフィードバックを行うスキルを身につける必要性があるとされているのです。

成果を上げている上司が「フィードバック」時にやっている5つのこと

部下がどんどんと成長する上司は、どのようなフィードバックをしているのでしょうか。ここでは、成果を出すフィードバックのポイントを5つ紹介します。

(1)フィードバックの目的を伝えている

部下に対してフィードバックする目的を伝えているかいないかは大きな違いです。目的も分からず改善点だけを伝えられた場合、部下が上司の意図を正しく汲み取ることは難しいためです。

スキルアップをして欲しい・リーダーシップを発揮して欲しいなど、フィードバックする理由と目的を伝えましょう。

(2)効果的なタイミングで伝える

基本的には、改善点が見つかったらすぐにフィードバックしましょう。その場その場でアドバイスすることで、その後のミスも防げます。

逆に、時間がたってからフィードバックすると、内容によっては「なぜもっと早く伝えてくれなかったのか」という不満につながりかねません。ですが、定期的な1on1ミーティングや考課面談など、一定期間の事柄をについてフィードバックするケースもあります。

効果的なタイミングを把握できるように、日ごろから部下を気にかけてあげるのが大切です。

(3)伝える場所に配慮がある

他の従業員の目がある中で、フィードバックをするのは避けましょう。フィードバックは一対一で行うのが基本です。ネガティブな内容を含んでいる場合は、特に場所の配慮が必要です。

伝える場所が悪いだけで、正当な内容だったとしてもハラスメントと受け取られてしまうリスクもあります。

もし、部下の行動が他の従業員にとって学びのケーススタディとなるときは、部下の許可を取ったうえで全体へ伝えるようにしましょう。

(4)相手のタイプに合わせている

人間にはいろいろなタイプがいます。褒められて伸びる人もいれば、怒られて伸びる人も。また、厳しい言葉の方が成長につながりやすい人もいれば、やさしい言葉の方が良い人もいます。

できる上司は、部下のタイプに合わせてフィードバックの内容や方法を柔軟に変化させながら対応しています。その人にとって、いちばん伝わる方法が何かを考えているのです。フィードバックそのものだけでなく、そうした姿勢は部下から信頼を得やすいため、よりアドバイスを真摯に受け止めてくれるでしょう。

(5)褒めることを忘れない

フィードバック際に、良かった点があれば先に伝えるようにしましょう。褒める際に押さえておきたいのは、部下の行動に焦点を当てるという点です。

仕事は行動しなければ、結果は出ません。その行動を褒めることで、部下は次も頑張ろうという気持ちになり、良い方向に向かってくれます。また、先に褒めておくと、ネガティブな内容を相手が受け止めやすくなるのもメリットです。

褒めるのが苦手という場合は、「部下の行動を認知している」と言った内容を伝えるよう意識してみてください。「○○をしてくれているね」というだけでも、部下は知ってもらっているという安心感を得られます。

教育にフィードバックが欠かせない理由

なぜフィードバックはそれほどまでに部下の成長に影響すると言えるのでしょうか?教育という観点で、フィードバックが欠かせない理由を解説します。

内発的動機付けになる

フィードバックは「内発的な動機付け」に大きく影響を及ぼします。

「内発的な動機付けができている」とは、仕事の意味を自分自身で見出し、自分自身でやる気を持っている状態です。内発的動機付けに効果的なものの1つがフィードバック。最適なチャレンジや能力を促進するフィードバックを行うことにより、学習者の内発的動機付けが高まると示唆されています。

つまり、社員教育において、効果を見込んでフィードバックを行うのは必要不可欠なのです。

良好な関係性を構築できる

フィードバックには、部下の成長はもちろんのこと、モチベーションの向上や良好な関係性の構築など多くの効果が期待されています。そのため、人事評価面談や1on1ミーティングだけでなく、最近では日々の仕事の振り返りなど、さまざまな場面でフィードバックが行われているのです。

コミュニケーションの機会が増えれば、それだけ信頼できる要素も増えます。お互いが信頼できれば、上司であれば部下にもっと成長して欲しいと考え、部下はこの人からの助言なら素直に聞ける、となるでしょう。

上司も、最初から的確なフィードバックが行えるわけではありません。相手を知らないと、的外れなアドバイスをしてしまう可能性もあります。的確な助言のためにも、日ごろからフィードバックを行ってコミュニケーションをとるようにしましょう。

フィードバックの効果をさらに高めるために

また、さらにフィードバックの効果を高めたいという方のためにフィードバックの手法として2つご紹介します。

  • (1)ポジティブフィードバック
  • (2)ネガティブフィードバック

(1)ポジティブフィードバック

ポジティブフィードバックとは部下の望ましい行動や言動を、前向きな表現を使って伝える手法です。どんなところが良いか伝えることで、部下の成長を促進します。

良い点を伝えてから問題点や成長した点を伝えると、部下の自己肯定感や意欲が高まり、自発的に行動するようになります。結果、成長が促進されるのです。

また、本人の成長のために行っていると伝わりやすいため、指摘したポイントを部下が受け入れやすくなります。

(2)ネガティブフィードバック

一方、ネガティブフィードバックは、否定的な言葉をあえて使用して指摘するフィードバックの手法です。

承認欲求を満たし、受け入れられやすいポジティブフィードバックに対して、ネガティブフィードバックは教育に相応しくないと考えられることもあります。

ですが、あえてネガティブな表現で返し、部下に自分自身にどのような問題があるのかを考えさせます。その結果、状況を打破する力を身に付けさせることが可能です。

ただし、タイミングや場所、相手を間違えないよう注意が必要です。ネガティブな内容になるため、パワハラと受け止められないよう、日ごろから信頼関係を築いておきましょう。

基本を押さえたうえで、真逆にも思える手法やちょっとしたテクニックを知っておくのも、フィードバックの質を上げることにつながります。

フィードバックを行う際の注意点

当社に寄せられる「職場・現場の声」の中には、「アドバイスしても部下に響かない」という上司の悩み、「あの上司はいつもダメ出しばかりで、何をしたらいいのか分からない」という部下の不満なども多く見られます。これらはフィードバックが機能していないケースだといえるでしょう。

アドバイスや改善点は、思ったままに伝えれば良いわけではありません。フィードバックする側がやってしまいがちなNG行動と改善のポイントについて紹介します。

よくある3つのNG行動と改善のポイント

フィードバックとは「部下に自身の状態を伝えたうえで、改善を支援すること」とお伝えしました。

もう少し詳しく説明すると、「客観的に見た長所や課題を部下本人に伝えて自覚させ(=適切な自己認識)、個人や組織に対してプラスの影響を及ぼす行動を増やす(=適切な行動の強化)」という効能を利用し、部下の成長を促していく教育ということです。

しかし実際には、上司が部下に対し下記のようなケースが多く見受けられます。

  • (1)大きな変化ばかりに着目して、小さな変化に気づいていない
  • (2)気づいたことを全て伝えてしまっている
  • (3)部下の成長段階に合わせた伝達・教育ができていない

当社では、これら3つの行動にフィードバックがうまく機能しない要因があると考えています。

もちろん部下側に問題があるケースも多々ありますが、本コラムでは本来上司側の理想的な行動とはどうあるべきかに注目して、効果的なフィードバックを行う方法を紹介していきます。

(1)大きな変化ばかりに着目して、小さな変化に気づいていない

本来あるべき上司の理想的な行動部下の小さな変化を意識的に観察する

成長というのは、簡単に、そして急激に起こるものではありません。そのため、大きな変化ばかりにとらわれ小さな成長・変化を見逃していては、部下の「モチベーションが上がらない!」という不満を招いてしまいます。

小さな変化を見落としがちなケースでは、意識的に部下を観察することが大切です。

具体的には、「成果」「行動」「姿勢・態度」「言動」の4つの項目を設けて、部下の様子を日々観察しましょう。そして、それを過去の様子と比べて、成長しているかどうかを計ります。

  • 成果:売上の達成や作成した成果物の数など。数値で測りやすいので分かりやすい。
  • 行動:時間の使い方、ケアレスミスの有無。
  • 姿勢・態度:仕事に取り組む際の、前向き・後ろ向き、積極的・消極的といった姿勢や態度
  • 言動:言葉遣いやポジティブ・ネガティブな言葉の多寡。

これらの項目を観察する際に注意すべきは、必ず"記録する"ことです。気づいた変化の全てを記憶してはおけません。部下からの日報に書き加える欄を設けておく、手帳やメモを使うなど、ツールは使いやすいもので問題ありません。

また、フィードバックを受ける部下側も、メモ(=記録)という事実があると、アドバイスや指摘を受け入れやすくなります。

ただし、いくら記録をしていても、記憶はどんどん薄れていきますので、フィードバックの効果を高めるためには、四半期に1回、1か月に1回など、定期的にフィードバックの機会を設けることが大切です。

(2)気づいたことを全て伝えてしまっている

本来あるべき上司の理想的な行動部下の変化を整理・特定し、伝えるべき要素を絞る

部下が成長するにつれて、伝えたい内容はどんどん増えていくものです。しかし、五月雨式にあれもこれも伝えられても、全てを意識できる部下はそうそういません。そのため、気づいたことを全て伝えるのではなく、今本当に「伝えるべき要素」と今は「伝えなくてよい要素」に整理し、伝える内容を取捨選択する必要があります。

例えば、「イライラするとすぐに顔に出てしまう」部下がいるとします。この課題を部下自身が認識している場合、周りの社員への影響がそれほど大きくないのなら、あえてフィードバックする必要はないかもしれません。

伝えるか、伝えないかの判断は時と場合によりますが、例えば本人がすでに課題として認識しているか、伝えることで部下の成長にどれだけ寄与するか、伝えなかった場合の影響範囲はどうかなどの切り口で整理し、総合的に判断していくとよいでしょう。

一度のフィードバックで伝えるのは"3つ"までと決めておくこともポイントです。

(3)部下の成長段階に合わせた伝達ができていない

本来あるべき上司の理想的な行動成長段階に応じて、関わり方(伝達方法)を変える

フィードバックの目的の1つに、「部下に理解・納得してもらい、次の行動につなげてもらうこと」があげられます。

しかし、例えば経験の浅い部下に対し、自ら答えを"導き出させる"コーチングの手法を使いフィードバックを行っても、「答えの選択肢を持っていない」「何を求められているのか分からない!」などと混乱させてしまい、次の行動につながる適切な答えは見つけてもらえないでしょう。

そのため、まだ成熟度の低い部下に対しては、答えを"教える"ティーチング主体のフィードバックがおすすめです。ティーチング主体で行うことで、フィードバック内容を理解・納得してもらいやすくなります。一方で、裁量のある仕事をしている部下の場合は、コーチング主体のフィードバックを行って自律性を養うなど、部下の成長度合いに応じて伝達方法を選ぶのが重要です。

どちらが主体のフィードバックを行うにしても、フィードバックする側に必要不可欠なのは「相手が理解できる言葉にする力=言語化力」と「相手の理解度を把握し、相手に理解してもらう力=対話力」です。

褒めるだけ、もしくは指摘するだけ、はすぐにできても、部下が「何をどう改善したらいいのか」を理解・納得できるように伝えるのは簡単なことではありません。

フィードバックスキルを伸ばして部下の成長を促進しよう

今回のコラムでは、上司側の行動に注目してフィードバックのポイントや手法などご紹介しました。もちろん、上司個人のフィードバック力だけに頼るのではなく、「フィードバック面談の基本ストーリーをつくっておく」「他部門のフィードバックのやり方を見る機会をつくる」など、会社としての仕組みを整えることでも、適切なフィードバックに一歩近づけるでしょう。

会社全体で適切なフィードバックを行えれば、部下一人ひとりの成長はもちろん、部門間や個人の"成長のばらつき"の解消も実現できます。本コラムを参考に自分自身・自社の現状を振り返り、今後の取り組みにつなげていただければ幸いです。

当社では、言語化力や対話力を高めるために必要な「論理的思考力」「要素分解力」「コミュニケーション力」などの研修も多数実施していますので、外部の研修なども活用しながら、効果的なフィードバックを行えるスキルを磨いていきましょう。

また、部下と接する機会の多い管理職向けのフィードバック面談の研修も用意してございます。ぜひ、ご活用ください。

【管理職向け】人事評価の基本<心構えと評価編> はこちら

【管理職向け】人事評価の基本<フィードバック面談編>はこちら

その他、管理職向け研修やコーチングの基礎力を付ける研修もございます。自社の課題に合わせてぜひご利用ください。

管理職のための部下育成シリーズ<聴く力&話す力研修>はこちら

【管理職向け】部下を育成するために必要な要素 はこちら

【基礎】部下を持つ管理職のためのコーチング研修 はこちら