コンピテンシーとは|活用法や注意点について

update更新日:2023.10.18 published公開日:2022.11.21
目次
近年、良い成果を生む行動特性としてコンピテンシーが注目されています。コンピテンシーは人事評価や人材育成、採用・面接でも活用される概念です。コンピテンシーの概念を企業で導入するには能力やスキルとの違いは知っておかなければなりません。
本コラムでは、コンピテンシーの活用法や注意点について紹介します。

コンピテンシーの意味や言葉が生まれた背景

コンピテンシーの概念は、1980年代にアメリカ・ハーバード大学の教授であるマクレランド氏が提唱しました。この概念を企業に導入する前に、コンピテンシーの意味や定義、生まれた背景を把握しておきましょう。

コンピテンシーは「良い結果を生む行動特性」という意味

コンピテンシーは「仕事において良い結果を生む行動特性」を意味しています。学歴や知能レベルが同じにもかかわらず、高いパフォーマンスを発揮する人とそうでない人がいます。彼らの思考や行動から、なぜ業績に差が出るのかを分析し、その結果導き出された「良い結果をうむ特性」がコンピテンシーなのです。

コンピテンシーは社員の具体的な行動だけではなく、その行動につながる性格・動機・価値観などを重視するものです。スキルや知識のように、ある程度定量的に評価できるものと違い、性格や動機・価値観は可視化しにくく、評価も困難です。コンピテンシーはそうした可視化しにくいものも含めた、行動特性を評価する際に役立ちます。

企業において社員に期待する成果は役割や業務により異なっています。そのため、コンピテンシーは職種や役割ごとに設定されるのが一般的です。

コンピテンシーが生まれた背景

先述の通り、コンピテンシーは1980年代に、アメリカ・ハーバード大学の心理学者であるデイヴィッド・C・マクレランド教授により提唱されました。米国文化情報局(USIA)の職員採用選考をきっかけとして、業績へとつながる従業員の特性について調査を行ったのです。

その結果、一般的に連想される学歴と業績に相関性はなく、高いパフォーマンスを発揮する従業員には共通した性格や動機、価値観があることが分かりました。

マクレランド教授は良い結果を生む行動特性をモデル化し、従業員のパフォーマンスを向上させる手法としてコンピテンシーを確立します。

1990年代からアメリカで採用・面接の場で活用され始め、日本ではバブル崩壊後の「年功序列」から「成果主義」へと人事評価が変化したタイミングで導入され始めました。

コンピテンシーの活用方法

企業においてコンピテンシーは人事評価や人材育成、採用・面接の場で活用されています。それぞれ現場での活用方法を詳しく確認してみましょう。

人事評価での活用方法

コンピテンシーの人事評価への活用は、最も一般的な方法です。人事評価で活用する際には、職種や役割ごとにハイパフォーマーにヒアリングし、明確な評価項目を設定。それに基づいて各従業員を評価するという方法がよく用いられます。

従業員が自分で設定した目標の達成度によって評価を行うMBO(目標管理制度)や、上司・部下・同僚など複数の立場から評価を行う360度評価と並んで活用されています。

多くの企業がMBOや360度評価を活用していますが、これらは評価するうえで評価者や被評価者の主観が入ることで、ブレが生じがちです。コンピテンシーはそのブレを最小限に抑えるために活用されています。

人材育成での活用方法

新入社員が入社した後に、個人の能力やキャリアの開発を目的として、コンピテンシー研修を実施する企業は少なくありません。コンピテンシー研修では、どのような思考・行動が良い成果を生み出すのかをテーマとしています。そのため、研修の最初にハイパフォーマーの行動特性を全体に周知するのが一般的です。

研修用にコンピテンシーモデルを作成し、どのような行動によって高いパフォーマンスを発揮できるのかを具体的に伝えることも忘れてはいけません。

また、人材育成のためだけでなく、従業員が自分で目標を設定する際にもコンピテンシーの概念が役立つことを覚えておきましょう。

採用・面接での活用方法

採用・面接で自社にマッチする人材を獲得するためには、明確な採用基準を設けて応募者の本質を見抜くことが重要です。事前にコンピテンシーモデルを作成しておくことで、応募者に対してハイパフォーマーの行動モデルを基準とした具体的な質問ができます。

採用・面接でコンピテンシーを活用する際には、最も成果を上げたエピソードについて質問するのが有効です。また、成果を上げるために工夫したことについて質問すれば、応募者の思考・行動を確認できます。

自社にマッチする人材を採用するには、応募者の持つスキルや経歴、面接官のフィーリングだけでは不十分です。コンピテンシーに基づいた評価基準も設けて、誰が面接を行っても評価にブレがないようにしておきましょう。

コンピテンシー活用の注意点

社員には、コンピテンシーに沿った行動が、100%評価につながるわけではないことを周知しておきましょう。コンピテンシーモデルが全ての状況に当てはまるとは言い切れないためです。仕事の状況によっては、モデルケースとは異なる行動が是となる可能性もあります。

また、表面的にコンピテンシーに沿った行動を取ればよい、という受け取られ方をしてしまうのも避けたい事態です。表面的に行動をなぞるだけではなく、行動に至る考え方まで浸透させるようにしましょう。そうすることで、モデルケースとは異なる状況に置かれた場合でも、しっかりと考えてパフォーマンスの高い仕事ができるようになります。

また、コンピテンシーを導入したことで、成果が出ているかどうかを定期的に振り返ることも重要です。会社の状況と評価項目に乖離が見られたら、柔軟に項目を変更して対応しましょう。

コンピテンシー活用のメリット・デメリット

コンピテンシーは社員を評価するうえで有効な概念です。しかし、メリットだけでなくデメリットもあるので、社内で導入する前に確認しておきましょう。

コンピテンシー活用のメリット

(1)生産性の向上が期待できる

コンピテンシーの概念に従ってコンピテンシーモデルを作成し、社員を適材適所に配置できれば、生産性の向上に期待ができるでしょう。

従業員が効率良く仕事に取り組む方法を理解していなければ、思うように業績を向上できません。しかし、コンピテンシーによりそれぞれの社員が「良い結果を生む行動特性」を把握することで、どのように仕事に取り組めばよいかが分かります。結果、仕事の進め方がスムーズになり、生産性が向上します。

(2)客観的な評価ができ、従業員の満足度が向上する

コンピテンシーを活用した人事評価では、職種や役割ごとに評価項目を策定します。評価項目はパフォーマンスの高い従業員の思考・行動を参考にするため、明確な基準を設けられるのが特徴です。そのため、業績が目標に達していなくても、コンピテンシーに則した思考や行動があったと評価できます。

明確な評価基準は、従業員も評価内容に納得しやすくなります。納得感のある評価をもらえれば従業員の満足度が向上し、モチベーションの維持にもつながるでしょう。

(3)採用基準を明確にできる

採用・面接にコンピテンシーを取り入れることで、選考時に注目すべきポイントが分かるようになります。例えば、採用・面接では以下のような点が問題です。

  • ・入社後の活躍を見据えた面接ができていない
  • ・面接官の直感やフィーリングで評価が行われている

従来の採用方法には応募者の知識や経歴、出身大学を重視するものが多いですが、それらの要素だけでは仕事の成果につなげられません。採用後のミスマッチを回避するためには、スキルなど表面的な部分だけではなく、性格や動機、価値観を見抜くことが重要です。

コンピテンシーを活用して自社の採用基準を明確にすれば、入社後に活躍してくれる人材かどうかを判断しやすくなります。

コンピテンシー活用のデメリット

(1)評価基準の制定が難しい

コンピテンシーは評価するのに有効な手段ですが、評価項目を完成させるまでに時間がかかる場合があります。

理由の1つがハイパフォーマーの抽出です。多くの従業員の中からコンピテンシーのモデルとなる人物を適切に抽出するのに時間がかかる場合があります。業績が数値で見えるような部署であれば抽出しやすいですが、非生産部門の社員は特に難しくなるでしょう。また、抽出したハイパフォーマーの共通点を見つけなくてはいけないため、ある程度の人数も必要です。

2つめが、ハイパフォーマー自身が「なぜ自分は仕事ができるのか」をうまく言語化できないケースです。その社員にとって自分が当たり前の言動を、他者に理解できるよう言葉にするのは、慣れていないと難しい場合があります。その場合、ヒアリングを繰り返して丁寧に聞き出していく必要があるため時間がかかります。

(2)細かな評価基準によって評価者の負担が増える

行動特性は目に見えない性格や動機、価値観を重視します。そのため、評価項目が細かく設定されることが多く、被評価者の数が増えれば増えるほど、人事評価に時間がかかります。また、社会情勢や企業の目標変更などに伴って、評価項目の見直しも必要になるでしょう。

つまり、評価すること自体はもちろん項目の運用自体も効率化を図らなければ、評価者の業務を圧迫する可能性があるということです。

生産性の向上や客観的な評価などのメリットがある反面、デメリットがあることも理解しておきましょう。

(3)自社に合わない基準にしてしまうと失敗する

コンピテンシー評価の導入には、社内全体を巻き込んで取り組む必要があります。そのため、自社に合わない基準を設定してしまうと、取り組み自体が失敗に終わるかもしれません。

仮に失敗してしまえば、従業員が企業の取り組みに不信感を抱き、最悪の場合には導入に協力してもらえなくなるでしょう。また、失敗により社員のモチベーションが下がる可能性も否定できません。

コンピテンシー評価の導入を検討している企業は、慎重に自社に合った基準を制定するようにしましょう。

コンピテンシーの導入方法

コンピテンシーを導入するには、ハイパフォーマーの行動特性を分析する必要があります。しかし、ハイパフォーマーからヒアリングした内容を言語化することは簡単ではありません。ハイパフォーマー自身もうまく説明できない可能性もあります。

ヒアリングのコツ・手順としては、各業務における行動や成果の取り組みを一つ一つ細かく区切ると良いでしょう。それぞれの取り組みの中で、意識したこと、使った言葉、資料、詳細の手順などを具体的にヒアリングすることで、本人は過去の事実を話せばよいので、比較的簡単に回答することができます。

それでも尚、ハイパフォーマーへのヒアリングは難しいという企業は、コンピテンシーモデルの作成に必要な情報が得られる「ビジネススキル診断テスト」を併用することをおすすめします。「ビジネススキル診断テスト」では、社員一人ひとりのスキルが明確になるのはもちろん、コミュニケーション能力や業務を滞りなく遂行する力、思考力などの可視化が困難な能力まで客観評価することができるため、ハイパフォーマーの特性分析にも有効です。貴社のタイミングに合わせた受検実施が可能なため、評価項目の見直しに合わせて実施するといったご希望にもお応えできます。

組織の成果につながるビジネススキル診断テスト~Biz SCORE Basic~はこちら

ALL DIFFERENT株式会社の無料セミナーもございます。ぜひ、併せてご活用ください。

無料セミナーはこちらからチェック