コンプライアンスとは?企業の違反事例とともにわかりやすくご紹介

update更新日:2022.01.21 published公開日:2021.09.28
目次
近年、コンプライアンスという単語が世の中に広まったことと同時に、企業のコンプライアンスに対する重要性が高まっています。このコンプライアンス、法律に違反さえしなければよいという認識ではありませんか?今回のコラムでは、コンプライアンスの概要・違反事例・具体的な取り組みについてご紹介します。

正しく認識しておきたい「コンプライアンス」とは

まず、コンプライアンスとは何かを正しく認識しておくためにもその定義を確認してみましょう。
「コンプライアンス(compliance)」の単語本来の意味は、「(命令・要求などに)従うこと」。そこから、「法令遵守」という解釈で使われています。文字通り、企業活動を取り巻く法令や規則を守り、違反をしないということですが、企業コンプライアンスの範囲は法令の遵守に限りません。

法令に違反していなくても、法の目をくぐるような行動やモラルに反する行動を取れば法令違反を犯したのと変わらない影響を受けます。
従って、コンプライアンスは「法令遵守」のほか、「社内ルールの遵守」や「社会的良識の遵守」といった意味も含め使われるのが一般的です。

コンプライアンス違反が発生する理由

近年、企業のコンプライアンス違反がニュースや新聞でも大々的に報道されることが増えています。社内の体制図に法務部門がしっかりと設けられている大企業であっても、コンプライアンス違反が発生してしまうことは少なくないです。
企業の信用や活動に非常にマイナスな影響を与えるコンプライアンス違反ですが、果たしてどのような理由から発生してしまうのでしょうか。違反の理由としては大きく以下の3点が考えられると言えます。

1.コンプライアンスについて知らない

そもそもコンプライアンスや法律についての知識が不足していることから発生する違反は多いです。このようなケースで発生した違反は、違反をした本人が違反であることを知らないために、本人はもちろん周囲が知らない間に問題が起きてしまった、という事例が非常に多いです。

2.コンプライアンス違反が起きやすい環境になっている

長年の違反行為が組織の風土となっていて、違反であるという意識が薄くなってしまっているケースもあります。このような場合、経営陣が違反行為を推奨、黙認している事例も少なくありません。その結果、新人や若手が違反行為に気が付いていても、周囲に言い出せない環境となってしまいます。

3.コンプライアンスを扱う仕組みや制度がない

社内でコンプライアンスに対する制度や仕組みが設けられていない場合も、違反の発生につながりやすくなります。また、このような制度が整えられていない企業の場合、企業としてのコンプライアンスへの方針が定まっていないことが多くあります。

「知らなかった」では済まされないコンプライアンス違反の事例

コンプライアンス違反が発生する理由を上述しましたが、コンプライアンス問題は企業に属する社会人であれば誰しもがそのリスクと隣り合わせとなることが多くあります。
コンプライアンスの違反行為によって失われた企業の信用や大きな損害を取り戻すことは非常に難しいと言えます。ここでは、実際に起こったコンプライアンス問題の事例をご紹介します。

問題となった事例(1)
大手化粧品メーカーの白斑様症状問題

2013年にメーカーによる対応の問題が明るみに出た事例です。この事例の原因は、大手化粧品メーカーが製造した美白用化粧品の使用で、肌がまだらに白くなる(白斑様症状)という化粧品メーカーではあってはならないトラブルが発生したことにあります。
しかし、この事例が異例の事態に発展した原因は、トラブル発生後のメーカー側の対応にありました。

経緯
当該化粧品は2008年9月に初めて発売し、順次拡充されていきました。
発売から3年後の2011年、購入者からメーカー側に最初の症例の相談がありました。続いて2012年2月には、関西支社の教育担当者より「同社の美容部員3名に白斑様症状が出ている」と本社に問い合わせがあったのです。しかし本社は問い合わせがあったこれらの症状を「病気」として判断・処理し、美白用化粧品が原因であることを疑いませんでした。
その後も複数の購入者からの相談が相次ぐこととなりました。2012年9月と、2013年5月には大学病院の医師から、美白用化粧品との関連性を疑う異常性白斑様についての電話連絡が続いてありました。メーカー側はこの件で初めて調査を行い、自主回収を決定しました。
この時点で、最初の相談から自主回収までに約1年半が経過しており、症状の報告は39件にものぼっていました。

自主回収の決定後
メーカー側は記者会見を開き、自主回収の発表をし、社長から被害にあった方々へ謝罪をしました。また、自主回収商品の代金と返送料のほか、肌のトラブルに伴う治療費は全額負担とし、社内で対策本部を設置しました。記者会見の日にあった問い合わせは約1万5千件にのぼったといい、現在でも全国で補償を求める集団訴訟が係争中となっています。
最初の問題を長い間見逃した結果として、前代未聞の被害の拡大を招いた事例となりました。

問題となった事例(2)
全国展開ホテルチェーンでの食品偽装問題

2013年に、歴史のある有名なホテルチェーンでメニュー偽装表示が発覚した事例です。この偽装表示発覚以降、国内では食材の偽装表示が社会問題化しました。この事例は、ホテルのレストランでメニュー表示されている内容とは異なる食材を使用し提供したことにあります。
しかし、この事例が多くの偽装問題の中でも注目された原因は、偽装発覚後の対応にありました。

経緯
このホテルのレストランで食品偽装が始まったのは、リーマンショックがあった2008年ごろでした。景気が落ち込み、ホテルの利用客も大幅に減ったことにより、コストカットの対象に食材費まで該当することになりました。しかし、今までよりも安価な食材を使用したところで利益は増えないと予想し、「鮮魚」と表示しながら冷凍品を提供するほか、「ビーフステーキ」と称して牛脂を注入し柔らかくした成型肉を提供するなどの食品偽装が行われました。また、食材の偽装だけには留まらず、各地の名産であるブランド豚と称し、別産地の豚肉を提供するなど産地の偽装もありました。
ホテル側は近年の食品表示に関する問題を受け、内部調査を行ったところ、食品の偽装表示があったことが発覚しました。偽装があった料理は計47品目に及び、およそ7年間に亘って延べ約8万人に提供されていました。
この後、ホテル側ではこの件について、「メニュー表示と異なった食材を使用していたことに関するお詫びとお知らせ」と題した公表分と共に記者会見行いました。ここでは今回の問題は「料理の偽装」ではなく、「メニューの誤表示」と説明しましたが、記者側はその説明に納得しませんでした。この後、当該レストランではキャンセルが続出したため、後日2回目の記者会見を行い、偽装の事実があったことを認めました。

食品偽装を認めた後の動き
2回目の記者会見にて偽装を認め謝罪したのち、当時の取締役社長は引責辞任となりました。また、この件で1万人以上が払い戻しを要求する事態となり、レストランだけでなく、ホテルの宿泊予約のキャンセルなどブランド全体に大きく傷がつくこととなりました。

コンプライアンスを推進するために重要な取り組みとは

コンプライアンス違反は発生してしまってからでは遅いため、違反行為を発生させないための事前の対策が非常に重要です。
事前の対策としては以下2つの取り組みが挙げられます。

社内でのコンプライアンス教育の体制構築

企業の中で、コンプライアンスに対する基本方針などを作成し、コンプライアンス違反に対する制度を構築しておくことは必須であると言えます。
しかし、制度を構築して終わりでは、違反・不祥事を未然に防ぐことにはつながりません。また、せっかく制度があっても全社員に浸透していなければ、いざ違反が起こった時に問題をさらに大きくしてしまう可能性もあります。
他の制度や取り組みと同様に、コンプライアンス違反に対する制度も社員一人ひとりがその意義をしっかり理解し、意識が浸透してこそ効果を発揮するのです。
まずは社内でコンプライアンスに対する基本方針を策定した後に、社員に対してコンプライアンスに関する研修やeラーニングなどを実施することが、取り入れやすい施策のひとつです。

コンプライアンスへの意識を高め、推進する社内の風土づくり

会社全体でコンプライアンスを推進する風土づくりをしていくことは非常に有効な対策と言えます。この風土づくりの要は経営トップにあります。経営トップがコンプライアンスを貫く姿勢を常日頃から社内に発信していくことで風土は形成されていきます。トップのコンプライアンスに対する意思を明確にし、社員一人ひとりのコンプライアンスへの関心・理解を高め、実践を徹底することで、様々なステークホルダーから信頼される組織が実現するのです。

以上、コンプライアンスの概要から事例までをご紹介しましたが、いかがでしたか。
全ての企業において、コンプライアンス違反をしないことは勿論、会社全体で日頃から違反につなげないための取り組みや社員の意識づけを実施することが重要です。
当社ALL DIFFERENT株式会社では、コンプライアンスの基礎知識から学べる研修をご用意しております。
身近なコンプライアンス違反の事例からケーススタディを交えて学び、根本的な意識変革をすることで、受講者自身と会社の未来を守ることができるようになる内容です。

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