チームビルディングとは?成果を出す組織づくりに必須のスキル!
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公開:2019.07.02
「成果を出す組織」と言われたとき、どのような組織をイメージしますか。メンバーの意欲が高く前向き、目的意識を共有できている、主体的な働き方をしているなど、いろいろな特長があげられると思います。
このような組織を作り上げるうえで重要になるのがチームビルディングです。本コラムではこのチームビルディングの概要や、著名なフレームワークを活用した実践のポイントについてお伝えします。

チームビルディングとは
チームビルディングとは、目的達成のために複数の人が集まり、一人ひとりの能力を活かす組織をつくることです。2011年に人事ポータルサイト「HRpro」が実施した調査によると、チームビルディングの必要性を「非常に感じている」「まあまあ感じている」と回答した企業の人事担当者は全体の84%にのぼり、多くの企業がその重要性を認識していると言えます。
その一方で、35.5%の人事担当者はチームビルディングを意識した取り組みの実施状況に関して「特にない」と回答しています。
「重要性は認識しているけど、どのように取り組んでいいのかわからない」
「業務が多忙で、なかなか時間が取れない」
このようなお悩みを抱えている人事担当者も多いのではないでしょうか。
チームビルディングの目的
そもそもチームビルディングの目的は何なのでしょうか。
それは「組織の成果を最大化させること」です。もしもメンバー一人ひとりの「個人力」が優れていたとしても、目指す方向がバラバラであったり、メンバー間の関係づくりが不十分であれば、パフォーマンスの「総和」を最大化することはできません。
特に近年はグローバル化・多様性の時代です。
国籍を問わず様々なバックボーンの人材とともに働く機会が増え、フレックスタイム制やリモートワークなど、柔軟な働き方が一般化しつつあります。こうした特徴のある昨今では、日本特有の「あうんの呼吸」や「察しと思いやり」といった文化が通用しにくくなってきています。
チームとして掲げられた目標を達成し、成果を最大化するためには、チームが一丸となって、同じ目標に向かって進んでいける組織づくりが重要となるのです。
チームビルディングが必要となるシーン
チームビルディングが必要となるシーンとして、3つの例を紹介します。
(1)小売業におけるチームビルディング
小売店や販売店では、正社員、主婦のパートタイマー、学生アルバイトなどさまざまな雇用形態、幅広い年齢の従業員とともに、日々の売り上げ目標の達成を目指して店舗運営していく必要があります。個人ごとの売り上げ目標を追求するあまり、メンバー間で衝突が発生することもあるかもしれません。店長やエリアマネージャーのようなリーダーは、売り上げ目標という成果を達成するために、チームとしての一体感を高め、円滑なコミュニケーションが生まれる環境づくりに力を割いていく必要があります。
(2)IT業におけるチームビルディング
システム開発等プロジェクトで業務を進める機会の多いIT業においては、多彩なスキルを持つメンバーをまとめながらプロジェクトを進行するPM(プロジェクトマネジャー)としての能力が問われます。
各々のスキルセットを把握し、適材適所のアサインを行い、納期通りに期待以上のクオリティの成果物を形作るためには、一枚岩になり、しっかり噛み合ったチームづくりが重要です。
(3)新規事業におけるチームビルディング
不確実性の高い新規事業では、既存のベストプラクティスをそのまま流用していてもなかなかうまく進まないことも多いでしょう。セオリーがないからこそ、リーダー一人の考えに固執することなく、メンバーから多彩な意見を拾い上げることが求められます。
自由闊達な議論を行いやすい空気を作ること、メンバーがいきいきとプロジェクトに取り組める環境を用意することが新規事業成功のカギになります。
これらのシーンに共通していることは、チームとして掲げられた目標を達成するための手段として、メンバー間のコミュニケーションを円滑にする「空気づくり」が重要であり、それを能動的に生み出していく動きがチームリーダーに求められるということです。
チームビルディングの観点がないとどうなるか
チームビルディングの目的や必要となるシーンについて触れてきましたが、チームビルディングの観点がなかった場合、どうなるのでしょうか。
一言で言ってしまうと、チームビルディングの観点がない集まりは「グループ」の域を出ません。
ここで「チーム」と「グループ」の違いについて確認をしておきましょう。
- <グループ>
- ・メンバーの頭数に合わせて、作業が割り当てられる
- ・成果はメンバーの成果の「足し算」
- <チーム>
- ・個々のメンバーの特性に合わせ、作業が割り振られる
- ・補完関係が機能すると、チームの成果は相乗的になる
※参照:株式会社ピープルフォーカス・コンサルティング ハイパフォーマンス・チーム研究会,2008,P.29
どちらも共通の目的のために複数の人が集まってできる集団であることには違いないのですが、チームは「集まった人達がプラスの相乗効果を生んでいる状態」をさします。
チームビルディングの観点を疎かにし、「グループ」どまりの組織になってしまうと、パフォーマンスを最大化することは難しくなります。
「グループ」を「チーム」に変化させるポイント
「グループ」を「チーム」の状態に変化させるためには、3つの要素が必要とされています。
- (1)ベクトル:目的や方針を共有し、皆が同じ方向を向いていること
- (2)プロセス:物事の進め方や役割が明確に決まっていること
- (3)ヒューマン:目標達成に必要なスキルを持った人材が揃っていること
この3つの要素がしっかりと機能し、メンバーの間で信頼関係や相互補完関係が構築されると、チームとしての結束が強まり、高いパフォーマンスをあげる「チーム」を形作ることが可能になります。
チームビルディングのステップ
実際にチームビルディングを進めるにあたって、チームがどのようなステップを経て成熟していくのかを理解しておきましょう。 著名なフレームワークとして、アメリカの心理学者である、Bruce Tuckman氏が考案した「タックマンモデル」を紹介します。 タックマンモデルでは、チームビルディングを4つのステップで整理しています。
ステップ(1):形成期
形成期は、チームを構成するメンバーが決定したばかりの段階であり、まだメンバーはお互いのことをあまりよく知らず、チームのビジョンや目的といった内容も理解していない状態です。
このステップにおいて重要なことは、リーダーがチームのビジョンを明確に示し、メンバーへの浸透を促すことです。同時にメンバー間の理解を深めるため、コミュニケーションを密にとれる場を提供することも必要になります。
ステップ(2):混乱期
混乱期は、チームのビジョンや目的が明確になった後、どのようにその目標を達成するか、解決方法を模索する段階を指します。
このステップにおいては、チームの動き方を検討するため、各メンバーの考え方や仕事の進め方について衝突が起きることも想定されます。しかし、この段階で意見の衝突を避け、リーダーや発言力のあるメンバーに迎合してしまうと、メンバー同士の不満や不信感が蓄積してしまい、後々チームとしての活動に深刻な影響を与える可能性もあります。メンバーの相互理解を深めるためにも、率直な意見を出し合い、しっかりと議論することが重要です。
ステップ(3):統一期
統一期は、チームとしての行動規範や役割分担が形成される段階を指します。
混乱期をともに乗り越える経験を経て、チームとしての団結が強まり、徐々にチームとしての機能が発揮される段階を迎えます。
ステップ(4):機能期
機能期は、チームとして機能し、成果を創出する段階を指します。
統一期の時点でチームとしての成果は上がり始めるのですが、その状態を継続するためには状況にあわせて活動方針や役割分担の見直しや調整が必要になることもあります。
この段階では、PDCAサイクルを回してチームの生み出す成果を維持・逓増できるよう努めることが求められます。
<チームのパフォーマンス>
チームビルディングを促進する具体的手法
先述の4つのステップを順調に進めていくために、どのような打ち手が有効でしょうか。
統一期までたどり着くことができれば、多くの場合チームとしての成果は自然に高まっていきます。
ここではチームビルディングにおいて課題になりやすい形成期および混乱期において、どのような取り組みを行うべきか、具体的な例をご紹介します。
(1)形成期
初対面、もしくは仕事上で関わる機会の少ないメンバー同士を組み合わせてチームを作り、ペアインタビューを行います。ペアインタビューは、相互理解を深めるためのワークショップ手法の一つで、2~3名の少人数グループを組み、特定のテーマについて聞き手と話し手(3名の場合はオブザーバーも含める)を交互に担当します。インタビュー後には互いに感想を伝え合い、より深い理解促進を図ります。
(2)混乱期
疑似的に体験する機会を通じて、混乱期における立ち居振る舞いを認識させる体感型のワークショップを2回以上実施します。(例えばペーパータワー、レゴゲームなど)
1回目のワークでは、チーム内の役割分担を特に指示せず、ワークを実施します。多くの場合では、それぞれが思い思いに動いてしまい、チームとしての一体感やまとまりが生まれず、失敗してしまうと思います。そのうえで、2回目のワークに臨むことで、1回目の失敗を受けてどのように役割分担してワークに取り組むべきかを各チームが考える機会を提供します。そうすると1回目よりも良い成果が得られ、役割分担の重要性など、混乱期を乗り越えるために必要となるポイントの理解が促進されます。
チームビルディングを成功させるために必要なこと
ここまでで、チームビルディングの推進にあたって留意すべきポイントについて、ご理解いただけたかと思います。
最後に管理職が組織をまとめ、成果を高めるために求められるリーダーシップについて触れていきます。
チームビルディングはリーダーシップを発揮するための一つの「要素」とも言えますが、リーダーシップを発揮した結果得られる「成果」とも考えられ、リーダーシップとチームビルディングの関係は「鶏が先か、卵が先か」の関係とも言えるのではないでしょうか。
リーダーシップを発揮した「成果」としてチームビルディングをとらえると、その推進にあたっては当然リーダーシップを発揮できるような「資質」が管理職に求められます。
ここでは、代表的な3つの資質についてご紹介します。
(1)ビジョニング
チームビルディングにおいては「ベクトル」や「プロセス」が重要な要素であることはすでに述べました。これを実現させるため、管理職は会社のビジョンや戦略をもとに「将来のあるべき姿」を明確に描く必要があります。また、このあるべき姿を踏まえ、具体的な達成目標へと落とし込み、どのようにその目標を達成していくか方針を示すことが求められます。こうしたビジョンを描くことを「ビジョニング」と呼びます。リーダーに求められる役割であり、必要な資質と言えます。
(2)コミュニケーション
チームの活力を高めるためには円滑なコミュニケーションを育む環境が不可欠です。(1)でご説明したビジョニングを実現させるためにも、いかにチーム全体に浸透させられるか、という点においてはコミュニケーションが重要になります。チーム全体の空気を形作るために、管理職には高いコミュニケーション能力が求められるのです。
(3)意思決定
リーダーの仕事は「意思決定すること」です。自分自身の業務だけでなく、チームの運営、他部門間の調整、メンバーの育成や評価など判断が求められるシーンは多岐に渡ります。一つの判断が多くのメンバーに影響を与える可能性があるため、意思決定にあたっては高い情報収集能力と、全体最適の視点が欠かせません。このようなスキルを持ち、公平・明確な判断基準で意思決定することができれば、メンバーからの信頼を勝ち得ることができ、チームビルディングにおいても大きな追い風となります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。チームビルディングの重要性について、理解が深まったと感じていただければ幸いです。
おそらく多くの方々は、日々の忙しい業務の合間を縫って、チームビルディングに励むことはなかなか難しいと感じられたのではないでしょうか。また、すぐに目立った成果につながる取り組みではないため、取り組みへの力の入れ方についてお悩みの方もいらっしゃるかもしれません。
チームビルディングは成果を生み出す「礎」です。
多くの時間を捻出することは難しいとしても、意識して働きかけていけば、少しずつかもしれませんがチームは変わっていきます。スモールステップであってもまずはじめてみる、意識してみることが大切です。このコラムが少しでも皆様の業務にお役立ていただければ幸いです。
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