管理職が果たすべき役割と求められる6つの仕事

update更新日:2022.06.09 published公開日:2017.12.20
目次
「管理職の役割とは何ですか?」と、管理職研修で問いかけると、業務の進捗管理・目標の設定・部下の育成やモチベーションアップ・人事評価など、様々な答えが返ってきます。管理職に求められる要素が多様化・複雑化する中、管理職が果たすべき役割と、担うべき仕事とは?
本コラムでは、管理職を “成果への責任と決裁権を持つ人” 、つまり “会社の未来を創るビジネスリーダー” と捉え、その役割や担うべき仕事について考えていきたいと思います。

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管理職とはどんな仕事?定義はある?

管理職とは、部署やチームといった企業の中の一定の範囲において決定権を持っている社員です。意思決定の他に、メンバーや従業員の教育や指揮、管理も行います。

例えば、部門の責任者であれば部長、課の責任者であれば課長が管理職です。日本の組織では、課長以上が管理職とされることが多く、決裁権を持たない係長や主任は管理職に入ることは稀。ただし、明確に法律等で定められているわけではないため、会社によっては係長に決裁権を与え、管理職として扱うケースもあります。

また、最近はマネジャーやゼネラルマネジャーなど、会社により異なる名称で呼ばれることも増え、「管理職」といってもその定義や捉え方に正解はありません。

管理職に求められる6つの仕事

管理職が管理職としての役割を全うするため、具体的にどのようなことを実践していけばよいのでしょうか?
管理職に求められる6つの仕事を、「業務面」と「組織面」に分けてご紹介します。


管理職が「業務」で求められる仕事

業務面で求められる仕事とは、自身が統括する組織の業務遂行を管理し業績に貢献することで、次の3つの取り組みが挙げられます。順に見ていきましょう。

(1)目標設定と業務の構想

管理職の役割は「組織の成果を出し続けること」です。ここで言う「成果」とは、例えば営業部門であれば、売上、粗利、市場シェアなどが挙げられます。しかし、一口に「売上」といっても、金額なのか、成長率なのか、はたまた新規顧客の割合なのか...その切り口は自社の戦略によって変わってきます。

そのため、管理職がまず行うべき仕事は、具体的な目標を定めることです。全社戦略・事業戦略を十分理解したうえで、自部門の成果を明確に定義します。

自身が管轄している組織の方向性を定めることで、一丸となって取り組めるようになるのです。

そして、自部門の成果を定義し具体的な目標を立てたら、次に取り組みたいのが「業務の構想」です。 簡単に言うと、「成果を出すために、自部門にどのような機能が必要なのか」を考えるものです。

ただし、自部門のことだけを考えてはいけません。自部門にとってはよいことが、他部署にはネックになる可能性もあります。管理職はそうならないように、会社全体を見る視野の広さが必要です。その上で、各部署に必要な機能と適切な人材の配置を行うことが求められます。

(2)進捗管理とPDCA

組織内で行われる業務の進捗管理やPDCAの実行も管理職の大事な仕事です。ポイントは、管理職自身が仮に人事異動で抜けたとしても「PDCAが回る仕組み」をつくれるか。具体的には、会議体の設計、KPIとそのレビュー方法の設計などが挙げられます。管理職だけでPDCAを回していては他のメンバーが学習できず、「その人がいないと何もできない!」という事態が発生しかねません。また、管理職が抜けた途端にPDCAが回らなくなってしまっては、組織の継続性も損なわれてしまいます。

最近は、内外の環境変化のスピードに合わせ、より迅速な意思決定が必要な場面が増加。変化が激しい場面では、PDCAに変わり、OODAループ(Observe観察、Orient状況判断、Decide意思決定、Act行動)と言われるサイクルも提唱されています。計画を綿密に練ったうえで施策を「計画通り」に遂行していくことだけを正とせず、過程や手段論は変化に応じて変えていく柔軟さも必要です。

(3)既存の業務の見直し

「既存の業務の見直し」は、維持と変革の両面から見る必要があります。「維持」とは、業務の標準化を行い軌道に乗せ、ミスやトラブルなく実行し続けられるように状態を整えることです。しかし、内外部の環境は常に変化するため、一度標準化した業務がいつまでもうまく機能するとは限りません。管理職が現場に近い立場であるほど、現状維持に力が働いてしまうためです。したがって、管理職は常に「このままでよいのだろうか?」と業務の在り方を見直す習慣を持ち、時にはゼロベースで業務構想をつくり直して新たな付加価値を生み出す、「変革」を行う勇気を持つことも必要です。


管理職が「組織」に対して求められる仕事

組織面で求められる仕事を見ていきます。
組織面とは、部下や従業員たちとコミュニケーションをとり、メンバーの成長や生産性向上などに取り組むことです。以下に具体的な取り組みを紹介します。

(4)理念や戦略の浸透

どれだけ優秀な人材が集まっても、目的を示すリーダーがいなければ組織として一つの方向を目指すのは困難です。船頭多くして船山に上るというように、バラバラな方向に走るようでは、成果は上げられません。

そのため管理職には、経営層から提示された理念、ビジョン、戦略を現場の言葉に翻訳し、メンバーに伝わりやすい最適な方法で正しい行動を促すことが求められます。

また、人には自分の取り組みに意義や意味を見いだしたいという欲求心理があります。自分たちの存在意義は何か、何を目指しているのか、達成したらどのようなメリットがあるのか。経営層が描いたビジョンを自分事として受け止めてもらうために、管理職が日頃からメンバーの関心事項を把握し、結びつけて伝えてあげることが大切です。

(5)仕事に対する動機づけと育成

メンバーに仕事を割り振る際は、必要とされる業務知識と本人のスキルや長所があっているかどうかを原則としましょう。
ですが、苦手な業務をこなすことで成長につながるという確信があるときは、あえて長所とは逆にアサインするケースもあります。

この場合、セーフティネットの確保が重要です。もし本人が全力を尽くしたにもかかわらず失敗してしまった場合、それをとがめたり仕事を外したりするのではなく、管理職が適切なフォローをする必要があるということです。セーフティネットがあるからこそ、メンバーは安心して全力を尽くせます。ビジネスにおいて人は7割を経験から学ぶと言われていますので、時には意図して挑戦の場をつくることが、メンバーの育成・成長につながります。

また、仕事のアサイン、メンバーの育成と切り離せない要素が「仕事の動機づけ」です。メンバーのモチベーションはチームのパフォーマンスを左右するため、部下のモチベーションを高める「動機づけ」は、管理職にとって大切な仕事です。

ここでは「アサイン」「動機づけ」「育成」の3要素を統合しているものとして、ハックマンとオルダムの職務特性理論をご紹介します。この理論では、以下の5つの特性が仕事のモチベーション維持に重要としています。部下のモチベーション管理の視点からも、ぜひおさえておいてください。

  • ①技能多様性:自分の持つ能力を活かせる仕事である
  • ②タスク完結性:仕事の始まりから終わりまで一貫して関わることができる
  • ③タスク重要性:仕事そのものが重要視されている
  • ④自律性:自分の裁量が発揮できる
  • ⑤フィードバック:実施した仕事から手応え(フィードバック)を得られる

(6)チームビルディング

学習するチームをつくることも管理職の大切な役割です。人は相互に刺激し合って成長し、相乗効果を生み出します。そのため管理職には、メンバー間のやり取りが円滑になるような振る舞いを意識し、行動することが求められます。

  • 自身の限界を認め、メンバーの力を借りるスタンスを取る
  • 職場の心理的安全を高めることで、メンバー同士が率直に意見を言い合える風土をつくります。

  • 責任と権限の線引きを明示する
  • 仕事のうえで行って良いことと悪いことを明示したうえで、良い行動であればOKを出し、NG行動をとった場合には、責任を取らせます。

  • 全力を出したうえでの失敗は許容し、失敗から学ぶことをチームで実践する
  • 一人ひとりのメンバーが貢献意識、当事者意識、責任感を持って、安心して仕事に臨める土壌をつくります。

管理職が果たすべき役割と、一般社員との違い

管理職には責任や決裁権が伴い、常に経営視点に立った行動が求められます。中でも最も重要な役割は「組織(部門)の成果を持続的に出す」ことです。 役割からもわかるように、一般社員と管理職の最も大きな違いは、主軸が「個人」にあるか「組織」にあるかです。個人のパフォーマンスを発揮して成果を出すことが評価される一般社員に対し、管理職はメンバーそれぞれのパフォーマンスを引き出して、組織としての総合的な成果を最大化することが評価につながります。

管理職に向いている人、向いていない人の特徴

管理職は、現場の社員とはまた違った能力や考え方が必要です。ここでは、管理職の向き・不向きについて紹介します。
管理職を目指すなら、どういった人材になればよいのかがわかります。また、現在管理職に就いていて、うまくいかないと悩んでいるなら、課題解決のヒントになるかもしれません。

管理職に向いている人

情報を収集し分析するのが得意な人
組織にとって必要な情報を集めて分析し、改善案を出して実行する。そうしたことが得意な人は、管理職に向いていると言えるでしょう。

管理職は、現場で働く部下の生産性を向上させ、利益を出す役割があります。そのため、どのような作業を行い、何をしているのか・ボトルネックはどこかといった情報を集めて分析し、状況を常に改善させなければいけません。市場で見るなら、自社のプロダクトに関するマーケット情報を集めて、より売れるようにするにはどうすればよいか考えていく必要があります。

ロジカルシンキングやクリティカルシンキングといった、本質を捉える思考法を身につけて、多数の情報から必要な分析結果を得られるようにしましょう。

経営者視点で考えられる人
管理職には経営者視点が求められます。経営者視点は、受け持っている部署や部下の仕事を、どのようにコントロールしていくかの指標となるためです。また、現場からはなかなか上層部の考えは見えません。そんな時に、管理職が「なぜ会社がそのような決定をしたのか」を部下に説明できないと、不安や不満が現場から出てきてしまうでしょう。

コミュニケーション能力がある人
部下のマネジメントや部署同士の折衝など、管理職は人対人のやり取りが多く発生します。また、力不足の部下に対して、指導する場面もあるでしょう。そこで必要なのが、コミュニケーション能力です。しかし、単に「話しやすい人」なだけでは、管理職として足りません。

例えば、部下から相談を受けて話を聞いたとしましょう。同僚同士の相談なら、話して終わりかもしれません。ですが、管理職であれば相談された内容の解決まで考えて、改善のために動くことが必要です。上司からの指示についても同様です。相手の期待や要望を汲み取って動けるかどうかまで求められます。

メンタル・フィジカルに自信がある人
管理職は責任者です。時には重責の中、決断を迫られます。判断を誤ることもあるでしょう。一般社員と比べて、決断を誤ったときのダメージは大きいものです。そうした決断の場面で胆力を発揮し、部署を引っ張っていかなくてはいけません。必然的に、メンタル面が強い人でないと、ストレスに負けてしまうおそれがあります。

また、仕事内容にはよりますが、自身の仕事と並行して、部下の仕事のチェックや他部署・クライアントとの打合せ等、多忙になります。体力が無いと体が持ちません。普段からメンタルやフィジカルを鍛えておき、元気よく働ける体づくりが必要です。

管理職に向いていない人

人に仕事を任せられない人
自分の仕事は1から100まで自分でこなしたい。そんな、職人気質なタイプの方は、管理職には向いていません。プロフェッショナルとして、自身の仕事を極めていく方が、キャリアアップにもつながるでしょう。

管理職は、自分の責任で人に仕事を任せるのが仕事です。気質的に任せられない・任せても自分で手を加えずにはいられない方は、まずはどこまでできれば合格ラインなのかを、任せる相手と擦り合わせるところから始めてみましょう。相手の合格ラインより少しだけ高い目標を設定してから任せ、徐々にハードルを上げていけば、自分が思う合格ラインまで相手の能力を引き上げられます。

数字や調整業務にやりがいを感じない人
組織の運営と数字は切っても切り離せません。売上や経費、生産効率など、仕事は数値でもって測られるためです。また、仕事には納期があります。スケジュールの調整はもちろん、コストやリソースなど、様々な項目において調整も必要になります。

数値の管理や調整にやりがいを感じない現場主義なタイプの方は、管理職には向いていないと言えます。ですが、自身の業務に近い数値から目標として取り入れることで、徐々に慣れていけば、気づけなかったやりがいが見えてくるかもしれません。

自己管理ができていない人
どんな仕事もそうですが、体が資本です。病気がちで仕事を休むことが多い場合は、まずは健康になるところからスタートしましょう。

また、遅刻や忘れ物など、社会人としては基本の部分でミスを続けてしまうと信頼も失ってしまいます。対策しても繰り返してしまえばなおさら、自己管理ができていないと見られるでしょう。信頼が無いと、管理職として仕事を任せてもらうのは難しいため、向いていないと言えます。

ただ、遅刻や忘れ物、仕事の順序がうまく立てられないのは、発達障害や病気などが理由のことも。おかしいなと思ったら、病院で検査してもらいましょう。理由がわかれば適切な対策が立てやすくなります。

管理職の役割を理解し、「経営視点」を持つことが第一歩

今回のコラムでは、管理職=会社の未来を創るビジネスリーダーと捉え、その役割や担うべき仕事について見てきました。どんな役割が求められ、どんな行動を取ればいいのか、参考になれば幸いです。

管理職には、常に経営の視点に立った行動が求められます。管理職になったばかりの"新米"管理職にとっては、プレイヤー意識から脱却し、経営・組織視点へシフトすることは難しいものです。しかし、視点のシフトができるかどうかが管理職として成長できるかの分かれ道になると言っても過言ではありません。
また、既に管理職として活躍されている方にとっては、本コラムでご紹介したような内容を実践できているか否かで、組織の成長、そして自分自身の成長にも大きな差が出てくるはずです。

ぜひ本コラムを参考に管理職の役割や仕事への理解を深め、また改めて日々の言動を振り返り、もし足りない知識やスキルがあったら、それを身につけられるような取り組みを実行していきましょう。管理職としてキャリアアップできれば、収入面や待遇面の向上はもちろん、仕事のやりがいもより大きくなるはずでしょう。

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