テレワーク環境下でのメンタルヘルス不調、その予防に向け会社ができることとは?

published公開日:2020.12.01
新型コロナウイルス感染症の拡大で「テレワーク」が浸透した今、働き方の変化によってメンタルヘルス不調を感じる社員が増加しています。そこで今回は、ウィズ・コロナ時代の働き方における心の健康の在り方や、社員のメンタルヘルス不調を予防するために会社としてできることについて考えていきます。

長期化するテレワークで心身の不調を感じる社員が増加

新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策として一気に普及したテレワーク。緊急事態宣言が解除された後も、引き続きテレワークを実施している企業は多く、恒久的なテレワークに踏み切った企業も出てきました。また、出社とテレワークを組み合わせた勤務体系にシフトする企業も増加するなど、新しい働き方の代表格として、テレワークが着実に浸透しています。

一方、テレワークが長期化し、「睡眠のリズムが崩れた」「人と話す時間が減った」「自宅の机やイスでは仕事がしづらい」ことでストレスがたまったり、対面でのコミュニケーションが減り「何が評価されるのかわからない」「部下の仕事ぶりが見えなくて不安」といった心配事が増えたりすることで、メンタルヘルス不調に陥る社員が増えているのも事実。実際に当社にも、「社員のメンタルヘルス不調にどう対処すればいいのか」、そんなお悩みが数多く寄せられています。

では、社員のメンタルヘルス不調を未然に防ぐために、会社としてどのような対策を講じていく必要があるのでしょうか。まずは、メンタルヘルス不調を引き起こす"ストレス"について考えていきます。

意外と多い!! テレワークに潜むストレッサー

心や体に影響を及ぼすストレスには、大きく分けて「物理的・化学的ストレス」「生理的ストレス」「心理的・社会的ストレス」の3つがあります。

このうち「物理的・化学的ストレス」は、騒音や暑さ・寒さ、労働環境など、主に外部からの圧力によって引き起こされるものを指します。テレワークという環境の中で見てみると、前述した「自宅の机やイスでは仕事がしづらい」ことのほか、「社外から社内ネットワークにアクセスしにくい」「夜遅くまで作業してしまい労働時間が長くなる」「家族から声がかかって業務が中断される」ことなどがストレッサー(ストレス要因)となります。

また「生理的ストレス」は、睡眠不足や過労、空腹、病気などが要因となり、テレワーク中だと、通勤や移動が減ることで起こる「運動不足」、合わない机で作業することによる「腰痛」などがよく挙げられます。読者の皆さんの中にも、実際に「体が重い!」「腰が痛い!」などと感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そして3つ目の「心理的・社会的ストレス」は、人間関係のトラブルや仕事上の評価、ノルマなどによって引き起こされ、「在宅勤務で何が評価されるのかわからないことへの不安」や「自宅にいる部下がちゃんと仕事をしているかが見えないことへの焦り」などがストレッサーとなっているようです。

このように、テレワークという環境の中には、メンタルヘルスに影響を与える多くのストレッサーが潜んでいます。新しい生活様式に則った働き方が求められ、今後「テレワークをせざるを得ない」社会になっていく可能性を考えると、ここで挙げたようなストレッサーを除去・軽減し、周りからの支援といった"ストレス緩衝要因"を引き上げ、ストレス反応を抑える、そういった仕組みづくりが必須となっているのです。

3つの視点で考える、メンタルヘルス不調を予防する取り組みとは?

ここからは、「物理的・化学的ストレス」「生理的ストレス」「心理的・社会的ストレス」の3つの観点で、テレワーク中のストレスを軽減・改善する取り組みをご紹介します。

①物理的・化学的ストレスの軽減

物理的・化学的ストレスの解消には、作業環境を改善することでストレッサーを除去、軽減することが効果的です。例えば、普段オフィスではデスクトップPCを使って作業しているのに、自宅では小さなノートPCを使用しているケースも多いのではないでしょうか。それによって体への負担が大きくなっている社員には、サブディスプレイを自宅に届け、デスクトップPCで作業しているかのような環境をつくるのも一手です。

また、夜遅くまで作業をしてしまうなど、労働時間が長くなっている場合は、管理職が労働時間を適切に管理する体制を整えることも必要です。自宅の環境によっては、「家族に会議の内容を聞かれてしまうためオフィスほど大きな声で話せない」「家族からの声かけや宅配便などで業務が中断される」というケースも多いため、その場合はサテライトオフィスの活用を推進するのもよいでしょう。

このほかにも、在宅勤務手当を支給して通信費や光熱費を一部負担する、デスクライトやイスなどテレワークに必要な備品購入費用を補助することでもストレス要因の軽減につなげることができます。

②生理的ストレスの改善

生理的ストレスを改善するには、「生活リズムを崩さない」「ストレス発散の機会を提供する」ことが不可欠。一般的に「睡眠のリズムが壊れると生活リズムが崩れる」といわれているため、起床時間を一定にすることを前提に、会社側としては、オンラインでの朝礼・終礼の場をつくり、1日のリズムを整えてもらうことが効果的です。スポーツジムの会費補助といった福利厚生施策がある場合は、その情報を周知し、適度な運動を促すことで運動不足の解消に役立ててもらうといった取り組みもお薦めです。

このほかにも、チームメンバーや他部署メンバーなどとの親睦を目的に、オンライン飲み会・ランチ会の費用補助を行っている企業もあります。ストレスの発散はもちろん、親睦を深めることで円滑なコミュニケーションが取れるようになり、業務にプラスに働くという効果も期待できますので、このような制度を試してみるのもよいでしょう。

③心理的・社会的ストレスの軽減

心理的・社会的ストレスを軽減するには、コミュニケーションの場を意図的につくることが不可欠です。特にテレワーク中は、どうしても上司・部下間の"すれ違い"が発生してしまうもの。上司からしたら、状況が見えないことで「ちゃんと仕事が進んでいるのか」と過度に気にしてしまう、それによって部下は「随分せかされるな」と感じ、お互いのストレスになってしまうこともあります。

そのため、②でも紹介した朝礼・終礼で部下の負荷状況を確認したり、簡単なアジェンダを作って情報交換したりする。また、オンライン会議ツールを活用して表情が見える状態で打ち合わせを行う、雑談チャットの設置で特定の業務によらない情報交換・共有をできるようにするといった、コミュニケーションを取れる場を積極的につくり、"状況が見えない状況"を改善することが大切です。

また、成果の見込みが立っていない人ほど評価への不安が大きくなる傾向にあることから、個々の社員が成果を出すためのサポートも必須で、そのためには管理職のスキルアップが欠かせません。具体的には、「部下の状況を的確に把握し、やる気を引き出す」「感情面に配慮した伝達方法を選択する」といったコミュニケーションにかかわる力を強化する、また「目標を明確化し、適切なフィードバックを行う」といった育成・評価面の強化が求められます。

ただし、管理職だけがスキルアップを図るのではなく、部下一人ひとりが能動的で適切な報連相を行うスキルを身につける、また自己のモチベーションを管理する力などを高めていくことも必須です。当社では、管理職向けの研修のほか、一般職向けの報連相研修やセルフマネジメント研修など、階層別の研修を多数提供しています。オンラインでの研修も実施していますので、ぜひご活用ください。

メンタルヘルス対策の先にある快適なテレワーク環境の構築

今回のコラムでは、テレワーク環境下で起こるメンタルヘルス不調の要因を確認しながら、作業環境の整備による「物理的・化学的ストレスの軽減」、生活リズムの維持やストレス発散の対処行動による「生理的ストレスの改善」、意図的なコミュニケーションや成果を出すためのサポートによる「心理的・社会的ストレスの軽減」という3つの視点で、社員のメンタルヘルス不調を予防するポイントを解説しました。

自社で取り組めそう、または取り組んでみたい施策はありましたでしょうか。ただし、本コラムで紹介したアプローチは、1つ1つを個別に考えるだけでなく、例えば「物理的・化学的ストレスの軽減(作業環境の整備)」×「心理的・社会的ストレスの軽減(成果を出すためのサポート)」で部下の業務処理能力の向上を図るというように、各アプローチを"クロス"させて考えていただきたいものでもあります。

新しい生活様式に則った働き方が求められ、テレワークを実施する企業は今後ますます増えていくはず。本コラムを参考に、働き方の変化に伴う「心の健康の在り方」を確認しながら、メンタルヘルス不調を防ぐ仕組みづくり、ひいては快適なテレワーク環境の構築につなげていただければ幸いです。