OJT研修を成功させる3つの○○!部下・後輩の成長を促す教育方法とは?

published公開日:2016.12.05
部下育成・後輩育成に有効とされ、多くの企業が社員教育として取り入れるOJT(On-the-Job Training、オン・ザ・ジョブ・トレーニング)。本コラムでは、OJTにより部下・後輩の成長を促すためのポイントをお伝えします。

「仕事そのもの」

OJTには、「仕事そのもの」、「指導する側」、「指導される側」の3つの構成要素があります。

「仕事そのもの」とは、「後輩・部下」にどのような「習得させる・させたい仕事」を与えるのか、ということです。

ここでのポイントは

  • (1) 後輩・部下がOJTを通じてどのような仕事ができるようになっているか
  • (2) そのために必要なスキル、知識、経験が習得されているかを具体化・明確化しているか
  • (3) 上記の状態に到達するために「どのような仕事を/どのように/どのタイミングで」与えるか

仕事そのものとは、この3つのポイントを考慮した育成計画を立案し、計画に基づき後輩・部下に適切な仕事を与えることであり、決して目の前の作業を依頼し続けることではありません。人材開発や部下の育成で当たり前のように言われるOJTですが、計画的なOJTは、「OJT担当者、対象者、内容などを具体的に定めて、教育を受ける側が着実に成長できるよう段階的・継続的に行なわれる教育訓練のこと」を言います。

OJT研修を成功させるための3つの○○で、部下・後輩の成長を促す!計画的なOJTは、「OJT担当者、対象者、内容などを具体的に定めて、教育を受ける側が着実に成長できるよう段階的・継続的に行なわれる教育訓練のこと」を言います。|人材育成コラム_4

では、具体的に「どのような仕事を/どのように/どのタイミングで」でOJTを実施すれば良いのでしょうか。
ここで注意したいポイントは、現在の自身と後輩・部下を照らし合わせるのではなく、環境や状況によって変化する仕事の進め方の変化も加味しながら、部下や後輩の現在の状態・能力を考えることです。

例えば

  • ・部下や後輩の成長につながり、かつ少し頑張ればやれそうな仕事は何か
  • ・部下や後輩の仕事を進める具体的な手順・考え方はどのようなものか
  • ・部下や後輩に必要な知識や参考図書、身に付けるべきスキルは何か

OJT研修の効果を高めるためには、「レディネスの形成」と「新人の傾向」を理解しておく必要があります。
「レディネスの形成」とは、例えば、研修を受講する人が研修で何を学ぶのか、また、その必要性を認識している、あるいは、事前に必要な知識を習得させ、すぐに学習できる準備が整っている状態を形成しておくことを意味します。OJT研修では、OJT研修の目的や「○○をすることができる」など研修を通じて達成してほしいゴールや人物像、事前のカリキュラムの共有や研修で用いる書籍の事前読書などを行うことで、レディネス形成につながります。
また、「新人の傾向」では、「自動ブレーキ型」※1や「経験前の学習」※2と言われるように、「言われたことは確実にこなす一方、失敗を極端に恐れ、不安があると行動に移せない」といった傾向が見られます。
このため、任せた仕事を通じた成長、仕事を進めるために必要な知識や手順を伝えた上で、適度な難易度の仕事を実践させ、万が一失敗した際の解決策を一緒に考えてあげることも求められます。

「指導する側」

「指導する側」のポイントは、与えた仕事ができているか、できていないかを確認するだけではなく、「できている場合はできた理由を明確にする」「できなかった場合は改善点を明確にする」「次に取るべきアクションは何かを具体的にフィードバックする」ことです。
「そうじゃない」「間違っている」と言うだけでは、後輩・部下は何を変えれば良いのかを理解できず、成長につながりません。スピードが武器と言われる時代に、何度も失敗し自身で悩みながら解決策を見つけることは効率的とは言えません。よって、OJT研修で指導する側は「後輩・部下にフィードバックするときの具体的な指導内容を常に明確にする」ことが必要です。また仕事を依頼するときには「注意点や仕事を進める上でのポイント」を可視化して後輩・部下に伝えておくことで、依頼した仕事の評価や後輩・部下自身の改善点が明確になります。

「指導される側」

「指導される側」のOJT研修のポイントは次の2つです。

  • (1) 自分が成長した状態を具体化しておくこと
  • (2) 目指す状態に向けての課題を考え、言語化しておくこと

自身の目指す状態は会社が提示している「人材像」や「目の前のOJT担当者」「ロールモデルと呼ばれる先輩社員」「同一業界・業種における知名度の高い専門家」などを基に具体化します。もちろん、今の自分のできていない点ができるようになっている状態でも良いでしょう。そして、課題認識を持つために、例えば、上司、同期、同僚などの社内関係者、お客さまからの声を参考に、自身の現状を客観的に評価することが必要です。漠然としたイメージで課題認識のないまま仕事をこなすことは、自らの成長を鈍化させることになります。

本コラムでは、「仕事そのもの」「指導する側」「指導される側」の観点でOJTの現状や問題点についてご紹介しました。現在OJTに取り組まれている、または今後取り組む予定の方は、OJTの内容の見直しをされるなど、今後の部下育成、後輩育成のご参考にしていただければ幸いです。

参考文献
  • ※1 公益財産法人 日本生産性本部(2014),
    『平成26年度・新入社員の特徴~新入社員のタイプは「自動ブレーキ型」~』より
    https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/R121attached.pdf
  • ※2 博報堂大学(2014),『「自分ごと」だと人は育つ』,日本経済新聞出版社,p37-38