株式会社 亀山博史氏 デジタル先進企業への道のり!大改革をもたらしたベイシアの怒濤のDX戦略 株式会社 亀山博史氏 デジタル先進企業への道のり!大改革をもたらしたベイシアの怒濤のDX戦略

「各業界で活躍されているあの人は何がすごいのか?」をコンセプトに、さまざまな業界で活躍する有識者から、“成長の秘訣”や“仕事論”を赤裸々に語っていただくHR×LEARNING スペシャルセミナー。
2023年12月15日開催のセミナーでは、株式会社ベイシア 役員待遇 デジタル推進本部本部長 兼 商の工業化推進本部副本部長 亀山博史氏にご登壇いただきました。群馬県を本拠地とするベイシアは、2020年にデジタル開発本部を設置。わずか1年半で進められたデジタル改革の施策、エンジニアの採用・定着に向けた活動、今後デジタル部門のリーダーに求められる人物像などについて、亀山氏に赤裸々に語っていただきました。今回のレポートでは、ベイシアのクラウド化・内製化を実現する組織づくりとDX戦略のヒントをお伝えします。

デジタル開発本部を発足、
0から取り組むDX推進

ベイシアグループは、ショッピングセンターやスーパーマーケットとして知られる「ベイシア」をはじめ、作業服だけでなく一般向けの高性能ウェアを扱うことで話題となった「ワークマン」、品数が豊富で充実しているホームセンター「カインズ」など、大手小売企業が名を連ね、企業数30社、売上高約1兆950億円の小売企業グループです。

亀山氏は、ベイシア入社後にデジタル開発本部を発足し、マーケティングやデジタル領域を統率。お客様が利用するアプリやデジタルポイントプログラムなどのカスタマーテクノロジー領域の開発・改革や、日本で1社目となる楽天市場が提供するネットスーパープラットフォームを活用したネットスーパー事業の開始、店舗における業務効率化に向けたシステム化など、矢継ぎ早にデジタル改革施策を進めてこられました。
今回は、ベイシアの怒濤のDX推進、内製化を実現するためのエンジニア採用や、組織づくりに関する具体例とキーワードをご紹介いただきました。

カスタマーテクノロジー領域の開発で「生活必需企業」へ

ベイシアのカスタマーテクノロジー領域には「ぐるぐる図」と呼ばれるデジタルコンセプトがあります。これは、お客様が店舗にいない間のコミュニケーションやデータの蓄積、データから社内政策へのつなげ方などが記載されたものです。
ぐるぐる図の起点は、まずお客様が利用するアプリ。アプリとデジタルポイントプログラムでお客様との接点を維持し、商品の良さをアピールするほか、インターネットでの便利なお買い物体験を提供し、会員数増加へつなげます。
会員数増加によって購買データなどを蓄積し、売れる商品の傾向、お客様が利用する店舗の傾向などを分析。お買い物体験をパーソナライズするとともに、効果的な出店の検討、プライベートブランドや商品の作り込み、その他の社内政策につなげる流れです。
このぐるぐる図を高速で回すことにより、お客様により良い生活、おトクで便利なお買い物体験を提供できる「生活必需企業」の実現につなげることを目的としています。

スマートデバイス活用と
クラウド化・内製化

さらに、「商の工業化」の拡大も進めています。商の工業化とは、経験と勘に頼るのではなく、「機械化・システム化・標準化を行い、業務改善と品質向上を発展・拡大させていく」ものです。

具体例として亀山氏が紹介したもののひとつが、発注や管理業務などのシステム化。店舗の従業員がスマートデバイスを使いながら、リアルタイムで在庫を把握できるだけでなく、本部からの指示、過去や今後の売価、各従業員に割り振られたタスクとその遂行方法など、スマートデバイスひとつで確認できます。

商の工業化推進も含むデジタル改革の内訳は多岐にわたりますが、その根幹をなすものこそ、「クラウド化」と「内製化」でした。クラウド化・内製化を進める理由は、サーバの保守管理にかかるコストをカットし、高い品質と速いスピードで開発することであると亀山氏は語ります。そのためには、内製化の重要性を強調しつつも、ITベンダーとの連携も必要不可欠であるとのこと。ベイシアでは、小売業の核となるアプリやネットスーパー、店舗の業務改革につながるシステムは積極的にクラウド環境を用いて内製化し、POSや自動発注、会計などはITベンダーと連携するという、「ハイブリッドなDX」を進める環境を整えていきました。

内製化チームのエンジニア採用と定着

最後に紹介されたのは、エンジニアの採用や組織づくりです。
亀山氏は、デジタル改革に不可欠な「デジタル内製化チーム」を強化するため、エンジニアの中途採用を選択しました。エンジニアに好まれるオフィスの条件や人事制度などを検討し、ジョブ型雇用かつリモートワークという労働条件を新たに策定。フルリモートでスムーズに働くためのノウハウを蓄積し、遠隔でのエンゲージメントを図るツールなどを活用し、「ベイシアらしい働き方」ができる環境を整えています。

また、亀山氏自身が多くの講演や取材に応じることも、採用戦略のひとつだと言います。ベイシアの取り組みが多方面で紹介されることにより、就職・転職を検討するエンジニアが、ベイシアについてよりポジティブで有用な情報をキャッチできるようになるからです。

新しい組織で良い文化をつくり上げるため、デジタル開発本部の初年度に“「For the Customers」「より良いものをより安く」をデジタルで進化させる”という「デジタルベイシアVALUE」を掲げました。立場に関係なく、皆で会話し、チャレンジできる心理的安全性を高めるため、「HRT(ハート)」(Humble 謙虚、Respect 尊敬、Trust 信頼)の徹底を推進しています。

加えて、円滑な部署間コミュニケーションをとるため、IT部門と業務部門の双方に相互理解のための研修も実施しています。業務部門が受講する研修では、IT組織の仕事にとって重要な要件定義、開発管理工程などの知識を学び、IT部門が受講する際には、業務部門の普段のミーティングにサイレントで参加し、小売業に対する理解を深める教育施策を実施しています。

上層部の理解獲得や
IT部門マネジメントなどの

ヒント満載の質疑応答

亀山氏の平明かつ具体例豊富なご講演に、参加者からは多くの質問が寄せられました。
特にIT部門のマネジメントに関する質問では、亀山氏から「イルカ型リーダーシップ」というフレーズが登場。リーダーシップ3.0の時代、従来の周囲を引っ張るリーダー像を超えた“皆がやりがいをもって働けているか、心の中で指さし確認する”リーダー像について解説いただきました。
セミナー終了直後から、「先駆者の意見を聞き、採り入れていきたいと思いました」「エンジニアに好まれるオフィスについて、大変参考になりました」などの感想が寄せられ、視聴された方々にとって重要な気づきがあったことがうかがえます。

今後もさまざまな業界から有識者の方をお招きし、皆様のビジネスのヒントをお届けします。詳細は、HR×LEARNINGスペシャルセミナーの特設サイトにてご案内しておりますので、ぜひご覧ください。また、ご興味のあるテーマやご要望、どんな小さなお悩みでも、どんどんお寄せください。

亀山氏のSPECIAL Words 生まれただけで丸儲けだったら人の役に立ちたい 亀山氏のSPECIAL Words 生まれただけで丸儲けだったら人の役に立ちたい

生まれただけで丸儲け、だったら人の役に立ちたい。
私は生まれる前、母の胎内の羊膜が破れており、自分の耳でそれを押さえていたそうです。そうしていたので死産せずに生まれてこれたそうです。
そのため、生まれつき右耳がほぼ聞こえておらず、形もいわゆる柔道耳です。中学校の頃にはからかわれたこともあり、おとなしい子供でからかわれないように常に人の目を意識していました。
しかし、大人になって何かふっきれ、「せっかく生まれてきたのだから、何か人の役に立ちたい。」と思えるようになりました。
明石家さんまさんの娘さんのIMARUさんの名前は「生きてるだけで丸儲け」の略だそうです。
そう思うと、大きなチャレンジも躊躇なくできますし、仮に失敗をしても、「まあ、生まれただけで丸儲けなんだから」と考えられます。
私にとっては生きていく上で勇気をもらえる言葉です。(亀山氏)