グローバル人材の育成
- タイプ別にみるグローバル人材に求められる能力 -

国内市場の縮小を背景に、年々多くの企業が海外へ事業を拡大しています。
また、少子高齢化による人手不足が進む昨今、日本で暮らす外国人を雇用する動きも加速しています。
こうした背景から、企業規模を問わず「グローバル人材」の必要性が年々高まっています。
本ページでは、グローバル人材のタイプと、タイプ別に求められる知識、スキルをご紹介します。

グロ-バル人材の定義と必要性

グローバル人材とは、自社のビジネスに精通していることを前提とした、異なる国籍・言語・宗教・価値観を持つ相手ともビジネスを円滑に進められる人材のことをいいます。
様々な背景から、企業におけるグローバル人材の必要性は高まっています。

背景の一つにあるのが、国内市場の縮小です。国内で売上を拡大することが難しくなり、海外に活路を探す企業は年々増えています。外務省によると、2019年10月1日時点での日系企業の海外進出拠点数は77,651にのぼります。これは統計を取り始めた2005年の拠点数の2倍以上です。

外務省 海外在留邦人数調査統 https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/page22_000043.html(2020 年 2 月 20 日時点)

ただし、企業の海外進出は容易ではありません。海外で活躍できる人材が社内にいない場合、企業の海外進出は困難になってしまいます。海外で活躍できる人材を確保する方法には採用と育成がありますが、こうした人材は需要が高いため採用するには大きなコストがかかります。既存の社員を育成し海外で活躍してもらうようにすることも有効な手段といえます。

他にも背景としてあるのが、少子高齢化です。人手不足が社会問題になる中、事業継続のために外国人を雇用する企業が増えています。日本で働く外国人労働者数は2018年10月末で146万人に達し、10年連続で増加しています。

厚生労働省 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_03337.html(2020 年 2 月 20 日時点)

ただ、外国人労働者を日本人労働者と差別するなど、外国人労働者に対する不当な扱いは昨今問題になっています。そうした企業は結果的に外国人労働者から選ばれなくなってしまい、事業継続が難しくなってしまう可能性があります。外国人労働者が働きやすい企業になるには、外国人労働者と日本人労働者両方の育成が必要となります。

日本におけるグロ-バル人材の4タイプ

では、社員をグローバル人材へと育成するにはどうするとよいのでしょうか。
一口にグローバル人材と言っても、国籍や働く場所などにより様々なタイプに分類できます。ここではグローバル人材を以下の4つのタイプに分類し、求められる能力や育成方法についてご紹介します。

1.外国へ出張・駐在する日本人

求められる知識・スキル
  • 語学力
  • 異文化適応力
  • 現地ビジネスの知識 など

「グローバル人材」という言葉から多くの人が思い浮かべるものがこのタイプではないでしょうか。外国へ出張・駐在しビジネスを進めるにあたっては、「語学力」はもちろんのこと、「異文化適応力」、「現地ビジネスの知識」が求められます。

「語学力」を身につけるには、継続が重要です。数か月英会話スクールに通うだけなどの場合、スクール修了から1年後には語学力が元に戻ってしまう恐れがあります。無理なく中長期的に取り組める語学トレーニングを選ぶとよいでしょう。
出張・駐在する人材にとって特に必要なスキルが、「異文化適応力」や「現地ビジネスの知識」です。これは書籍や研修だけで学ぶには限界があるため、現地での留学など短期滞在をすることで理解を深める必要があるでしょう。

これらに加え、外国で駐在する場合は日本で携わっていた業務と現地で携わる業務の違いにも着目する必要があります。例えば、日本では成熟した事業の既存顧客向け営業をしていた人材が、駐在先で新規事業の統括を行うには、持っているスキルと求められるスキルに大きな乖離があります。駐在する人材の育成プログラムを組む際は、こうしたギャップも踏まえることがポイントです。

2. 日本にいながら社外の外国人とやり取りをする日本人

求められる知識・スキル
  • 語学力
  • 異文化理解力
  • わかりやすく伝える力 など

外国にある取引先とメールで連絡を取り合う人材や、外国からの観光客に接客をする人材などがこのタイプにあてはまります。こうした人材に求められる主な能力は、「語学力」と「異文化理解力」、そして「わかりやすく伝える力」です。

外国へ出張・駐在する人材と同様に、「語学力」を身につけるには継続が重要です。また「異文化理解力」を高めるにあたっては、外国の文化について知るだけでなく日本の文化についても理解を深めることがポイントです。日本では常識とされていることが、外国人にとっては常識ではないということもあるのだと知っておくだけでもビジネスを進めやすくなります。

そして、重要であるにも関わらず見落とされがちなのが「わかりやすく伝える力」です。口頭でも文書でも、社外の外国人とやり取りをする際は、限られた時間で自社の商品やサービスを相手にわかりやすく伝えることが求められます。自社の商品やサービスの熟知だけでなく、相手の心情を読み取る力や論理的に思考する力も必要といえます。

3. 日本で働く外国人

求められる知識・スキル
  • 文脈理解力
  • タイムマネジメント力
  • 日本のビジネス慣習の知識 など

外国人労働者を雇う主な理由は労働力不足を補うためと考えるケースが多くありますが、他にも「優秀な人材の確保」「インバウンド対策」「海外進出などのためのアウトバウンド対策」などの理由もあります。いずれの理由にしても、外国人労働者が日本国内で働く際には、共通の課題が挙げられます。

課題の一つが、コミュニケーションの齟齬です。日本人の会話はハイコンテクスト(文脈や意図を高度に察し合うこと)であると言われています。多くの外国人労働者は日本語学校で日本語を習得していますが、語学力だけでは日本人の会話の文脈を察しきれずコミュニケーションがうまく取れない場合があります。育成にあたっては、日本人の会話の真意を探る傾聴方法や質問方法を外国人労働者に身に着けてもらうとよいでしょう。

また、時間に対する意識の違いも課題になりやすいです。開始時間を厳守するなど、タイムマネジメントの意識づけも育成上は重要になります。自社でのOJTに加えて、研修などで体系的に学んでもらうことも有効でしょう。さらに、外国人労働者が違和感を覚える可能性がある「日本のビジネス慣習」についても、理解してもらうことが必要です。

4. 社内の外国人と日本で働く日本人

求められる知識・スキル
  • わかりやすく伝える力
  • 対話力
  • 価値観受容力 など

外国人労働者が日本企業で活躍するためには、外国人労働者の育成に加えて、社内の日本人に対する育成も同様に重要です。

日本で働く外国人は、日本人労働者のハイコンテクストな会話の理解に苦労することが多いです。外国人労働者に日本独特の文脈を理解してもらうよう努めるだけでなく、日本人労働者も、誤解なく理解してもらえるように伝える工夫が求められます。それには話すスキルや書くスキルを磨くことが効果的です。さらに相手のことを尊重しながらも、自分自身の意見などを適切に表明すること(アサーティブコミュニケーション)も要求されます。これらは必ずしも相手が外国人労働者だから必要というわけではありません。普段から意識して行動し、研修などで学ぶとよいでしょう。

さらに、異なる価値観を持っている相手を受け入れることが重要です。それにより外国人労働者にとって働きやすい環境になるだけでなく、物事をより柔軟に捉えられるようになるというメリットも得られます。異なる価値観を受け入れられるようになるには、外国人労働者と働く中で価値観の相違を感じたときに日本人労働者が「常識」だと思っていることを書き出すことなどが効果的です。

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