女性社員に昇進を受け入れてもらうポイントとは?
2017年4月13日
前回レポートしました「妬み」の他にも、リーダー昇進に伴う様々なつまずきのポイントがあり、そんな先輩の様子を見た女性社員は尻込みをする・・・昇進してもらいたい女性社員がそんな状態にあるとしたら、上司はどのように振る舞えば良いのでしょうか。
リーダー初期に遭遇する「リアリティショック」とは
4月になり新入社員を迎え入る時期ですが、近年よく問題になるのが「こんなはずじゃなかった・・・」といって、入社から間もないのに残念ながら辞めてしまう社員が少なからずいることです。人材育成の分野では、環境変化にともない「こんなはずでは」という理想と現実の心理的ギャップが生じてしまうことを「リアリティショック」と呼びます。
この「リアリティショック」ですが、新入社員時代だけでなく環境変化の大きいときに起こりやすいと言われています。実務担当者からリーダーになったばかりのころも同様です。思い描いていたリーダーの役割と実際の仕事内容には差があることでとまどい、場合によってはそこでつまずいてしまう、といったものです。
「女性は昇進するとうろたえるので、リーダーに向いていない」などという意見を聞くこともありますが、今回の調査でリーダー就任直後のリアリティショックに男女の差がない(男女とも同程度にリアリティショックがある)ことが分かりました(t検定、統計的有意差なし)。仮に女性がリーダーになってすぐに成果が出せなかったからといって「女性はリーダーに向いていない」ということにはならないし、反対に男性もリーダー就任直後は相応のフォローが必要であるといえます。男性も女性も、急激な環境変化に応じて、心理的ギャップが生じるのは同じなのです。
しかし、昇進のときにかかえる課題には、ジェンダー差があります。男性は、プレイヤーとしての業務とマネジャーとしての業務のバランス(プレマネバランス)や多様な人材活用、社内におけるネットワーク・連携といったことが女性に比べて苦手な傾向があり、上司は幅広くフォローすることが求められます。
対して女性は男性と比べてメンタルタフネスにおいて苦手意識があります。不確実な出来事や曖昧な状況、仕事をする上で生じる葛藤や衝突に遭遇し悩んでいないか、特にリーダーになりたての女性社員をチームに持つ上司は気を配る必要があるといえます。
“Why me?”(どうして私なのですか?)にどう答えるか?
昇進することで周囲からの妬みに晒され、さらにリアリティショックに遭遇している先輩女性社員を目の当たりにすれば、昇進に対して尻込みしてしまう女性社員も多いと考えられますが、ではリーダーになってもらいたい女性社員に対しては、上司はどのように接すれば良いのでしょうか。
この問いに対するヒントとなるのが「どうして私なのですか?」という女性社員の言葉です。この言葉、昇進を打診した女性から聞かれた経験のある方もいらっしゃると思いますが、ここで女性社員はどのような回答を期待しているのでしょうか。
現在管理職の立場にある人に「管理職の役職を引き受けた理由」を聞いたところ、女性で最も回答が多かったのは「上司のために引き受けざるを得なかった」(32%)で、続く「もともと昇進したいと思っていた」(14%)や「社会や会社から認められることだと思った」(14%)を大きく引き離しました(男性は順に23%、20%、20%)。
男性の場合はもともと昇進に対して意欲的な社員も多く、会社からの期待や昇進した場合のメリットなど、昇進に対する意義付けをきちんと行うことで比較的スムーズに昇進が自分ごと化され、「やります」「やらせてください」というコミットメントを引き出すことは難しくないと言えます。
一方の女性は、「上司のために」という結果が示す通り、上司との信頼関係によって昇進を引き受けるか否か、あるいは引き受け方や昇進へのモチベーションが左右されることが示唆されます。
「どうして私なのですか?」という女性社員からの質問は、自身の実績やスキルに対する評価の確認もさることながら、より重要なのは「私は信頼している上司から頼られている」ということの確認ではないでしょうか。この点、上司から「私を助けると思って」「あなたに助けて欲しい」といった説得をすることも効果的と考えられますが、上司にとってより大切なのは日頃の信頼関係の構築といえます。女性活躍を推進する際は、本レポートでお伝えしてきた通り、「平等な機会を与えているか」「残業を見直そうとしているか」など、「男性中心の職場文化になっていないか」を今一度振り返ってみてはいかがでしょうか。
【調査概要】
調査対象者 | 企業に勤める管理職・リーダー・実務担当者
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回答者数 | 管理職 | リーダー | 実務担当者 | 合計 | |
男性 | 1,575 | 799 | 1,300 | 3,674 | |
女性 | 369 | 344 | 1,015 | 1,728 | |
合計 | 1,944 | 1,143 | 2,315 | 5,402 | |
調査方法 | 自記式アンケート調査 | ||||
調査期間 | 2016年9月~12月 | ||||
調査内容 | 各層ともに、キャリアおよび仕事に対する意識と行動、 また会社の制度や環境、職場文化など長く働くことに関する全般について、 「現在どうか」および「過去のある時点でどうだったか」を調査 |
※ 調査結果を引用・転載する場合には出典を記載してください。
【出典記入例】
- 出典:トーマツ イノベーション(現・ALL DIFFERENT)×中原淳 女性活躍推進研究プロジェクト (2017)「女性の働くを科学する:本調査」(https://www.all-different.co.jp/npro/2017/)
- 出典:トーマツ イノベーション(現・ALL DIFFERENT)×中原淳 女性活躍推進研究プロジェクト (2017)「女性の働くを科学する:追加調査」(https://www.all-different.co.jp/npro/2017/)
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