『100人100通りの人材の活かし方とチームワーク』
サイボウズの中根本部長を招き、セミナーを実施しました|イベントレポート|組織開発・人材育成

2020.01.28

2019年12月9日、サイボウズ株式会社の中根弓佳人事本部長 兼 法務統制本部長をお招きし、セミナーを開催しました。本セミナーでは、「100人いたら100通りの働き方があってよい」という同社の組織づくりのポリシーと、そのポリシーを実現するための制度や制度運用のコツなどについてお話しいただきました。

『100人100通りの人材の活かし方とチームワーク』サイボウズの中根本部長を招き、セミナーを実施しました|イベントレポート_3

「自分たちは何者か?」
たどりついたのは「チームワーク」という共通の想い

「kintone」や「サイボウズOffice」といった、チームコラボレーションを推進するグループウェアを開発・提供するサイボウズ。「100人いたら100通りの働き方や制度があってよい」と考える同社では、社員が望む多様な働き方を実現すべく、様々な取り組みを実施しています。

「きっかけは高い離職率。2005年は28%で、正社員100人のうち1年に28人も辞めていた。2週間に1回、花束贈呈式が行われていたんです」

セミナーの冒頭、組織改革に踏み切った背景を明かす中根本部長。「売り上げは好調なのに、どんどん人が辞めていく。原因は度重なるM&Aで、グループ社員と事業が増え続けていたこと。自分たちは何をしている会社なのかわからない状況だった」と当時を振り返ります。

この状況から脱却すべく、まずは辞めた社員に話を聞くことから始めたという同社。様々な想いに触れる中、「新しい事業に想いを持っている社員がほとんどいない。共通の想いはチームワーク」だということに気づき、「チームワークの支援に事業を絞る」という経営判断を下しました。

「ビジョンの共有と共感が大切。私たちがどんな想いでこのチーム(会社)に集まっているのかが明確になったことで今の会社がある」。現在は、「チームワークあふれる社会を創る」を企業理念とし、「チームワークあふれる社会を創る私たち自身も、チームワークあふれる会社でありたい」という想いで人事戦略を立てています。

全員が幸せに働くためのあらゆる制度で、離職率は4~5%に

チームワークの支援へと事業の舵を切った同社は、働く時間や場所の選択、最大6年の育児休暇、子連れ出勤、副業の解禁など、これまでにあらゆる制度を整えてきました。

多様な働き方を推進する企業にとって、「一般的に短時間勤務は、子どもを持つ親か介護を抱えている人という条件がつく。そのため、制度を利用する人に対するマイナスイメージが出てくる」「リモートワーク制度を使うと、オフィスにいない間にサボっているようなイメージを持たれがち」といった悩みが付き物です。同社では、「条件を一切なくし、誰でも制度を利用できるようにした。また、制度を利用することで得られる個人・会社双方のメリットを明確にする」ことで、社員を取り巻く不安・不満を解消していったそうです。

このほかにも、「会社にコミットしていない時間は自分の幸福のために使ってよい」という方針から、申請すれば誰でも副業ができる制度を導入している同社。その狙いは、「人生100年時代の今、(大卒の新入社員が)22歳で会社に入って、そこからずっと同じ興味が続く人の方が少ない。自分が興味のあるものに対してどんどんスキルを増やしてほしい」から。中根本部長自身も「自分としても新しい挑戦の機会があり、自己成長のために副業を始めた」そうです。副業解禁の効果は大きく、「サイボウズのことは好きだけど、他のことに挑戦してみたいからと離職してしまう社員にも、より長く働いてもらえるようになった」と、組織改革のきっかけとなった離職率の改善も実現しました。

あらゆる制度を定着させたことで、グループ連結の社員数が約900人に増加した今でも、離職率4~5%という低水準を維持している同社。「一人ひとり違う働き方に対応するための制度や管理体制を作るのは大変ではないですか?」というセミナー参加者からの質問には、「大変ですよ!」との本音とともに、「社員が幸せになって、このチームで働きたいと思ってくれるかを常に考えている」と熱い想いも語ってくれました。

情報共有の仕組みを構築し、"多様な働き方"と"チームワーク"を両立

様々な制度を導入して大きな成果を上げている同社ですが、チームワーク良く働く環境を構築するには、「『制度』だけでなく、『ツール』の活用と、多様性重視、個性の尊重といった『風土』の3つをバランスよく整えることが大切」だと中根本部長は語ります。

特に、「それぞれが違った働き方をしているからこそ、情報の対称性を大切にしている」同社では、情報共有クラウドなどのITツールを活用し、「業務に関わるデータベース、文書ファイル、コミュニケーションを1つのプラットフォーム上で運用し、オープンに共有する」ことで、部門・役職を問わず、全社レベルで情報を共有。「特定の人がいないと業務が進まないという属人化や非効率さを解消し、全ての社員が同じ視点で議論できる環境」を整えたといいます。また、情報共有の仕組みを構築し、「オフィスにいてもいなくてもストレスなくやり取りができ、いつでも・どこでもスムーズに業務を進められるようになった」ことが奏功し、「多様な働き方とチームワークの両立」も実現しました。

最後に中根本部長は、「うまくいっていることばかりではないが、企業理念には皆が共感している。"チームワークあふれる会社"の実現に向け、一人ひとりが良いチームにしていこうと意識していることは確か」とし、「チームワーク良く働く環境を実現するには、"私たちってこういう価値観に共感している仲間だよね"という一体感を作ることが大切」だと語り、セミナーを締めくくりました。

セミナー終了後には、「チームとしての一体感を作り上げるための方法を考える中で、非常に参考になった」「まさに今、離職率に悩んでいる。どのように乗り越えたのかがわかったので、早速自社でも取り組みたい」といったコメントが寄せられ、組織改革を実現した企業の生の声から多くのヒントを持ち帰っていただけたようです。

当社では今後も、様々な業界から講師をお招きし、企業の人材育成や組織づくりに役立つセミナーを実施していきます。ご期待ください。

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