主体性とは?自主性との違いや発揮するための3つの要素とは



主体性とは?
主体性とは、「何をすべきか決められていないこと」に対し、自分の意志・判断により自ら責任をもって行動する態度や性質のことを指します。
例えば、「上司に指示されたわけではないが、部門の課題を解決するための施策を考え上司に提案する」といった具合です。周囲から影響されて行動するのではなく、自ら目的と行動を設定し実行に移す人は主体性がある人といえます。
主体性と自主性の違い
主体性と似た意味で使われる言葉に「自主性」があります。主体性と自主性の違いはなんでしょうか。
自主性とは、予め決められたことを自ら率先して行動する態度や性質のことを指します。例えば、「常に整理整頓する」「出社時と退社時は必ず元気よく挨拶をする」などの組織内で決められたルールを誰に言われずとも率先して行う若手社員は、「あの人は自主性のある人だ」という評価を周囲から得ているのではないでしょうか。率先垂範する優等生をイメージされる方も多いと思います。
一方で、主体性はルールに縛られず、必要とされる行動を率先してとることを指します。行動の前に決め事があるのが自主性、無いのが主体性と区別すると分かりやすいでしょう。
世界的名著である7つの習慣では、「主体性を発揮することとは、自分の人生を自ら選択し、自ら責任をとるということである」と定義しています。責任(responsibility)は反応(response)と能力(ability)が合わさったものであるため、責任とは「自分の反応を選択する能力のことである」という考え方です。
つまり、人間は本来、周囲に何が起ころうと、自分自身で判断し言動を選択できる能力を持っているということです。「主体性を発揮する力」は、特別な人や特別なトレーニングを受けた人だけが持っている能力ではなく、すべての人が元々持っている能力といえます。
主体性がなぜ必要なのか
そもそも、主体性はなぜ多くの企業で求められているのでしょうか?
VUCA時代における主体性の重要性
主体性が必要とされる背景には、現代が不確実性の高い状況下にあることが要因のひとつです。何が起こるかが分からない、先の見通しが立たないVUCA時代と呼ばれる現代、会社の存続はもちろん容易ではなく、時代の流れに合わせて柔軟に考え方や行動を変えていかなくてはいけません。
また、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、コミュニケーションの取り方や働き方、サプライチェーンなど、世界中で多くの変化が起きました。今後は、AI・IoTをはじめとしたテクノロジーの発展により、更に速く激しい変化と、ますます先の読みにくい時代が待っています。
そのため、経営者だけ、もしくは少数の幹部だけで意思決定をして組織を動かしていくことは非常に困難になりつつあります。経営陣は現場から遠い分、顧客や市場の変化に気づきづらいものです。現場の戦術レベルでの変化対応をすべて指示することはほぼ不可能です。
また、過去の成功事例が役に立つとは限らない変化の激しい現代では知識が豊富で特定領域の専門性を有する人材がいたとしても、自ら目的・課題を設定し、周囲を巻き込み動いてくれる人材、すなわち「主体性の高い人材」がいなければ、組織は立ち行かなくなってしまいます。
さらに、外部環境が変化する中では、変えないといけないことは社内でも発生します。場合により、指揮命令系統が機能しないケースも考えられますが、目的を鑑みて現場で臨機応変に対応し組織を引っ張っていく主体性のある人材がいれば、危機を乗り越えられる可能性は高まるのではないでしょうか。
リスクマネジメントの必要性は高まっている
企業にとってリスク回避は無くてはならないものです。特に情報伝達のスピードが加速している現代においては、小さな火種も一気に燃え広がってしまいます。
社員が主体性をもって仕事に取り組むことで、そうしたリスクに気付ける可能性が上がります。仕事の進め方、サービスの質、商品の安全性など、あらゆる場面において主体性を持つことは役立つでしょう。
問題が大きくならないうちに自らが改善策を考えて提案し、実際に行動してリスクの芽を摘むことができれば、安定した企業活動が行えるはずです。決められたルール通りに行動する自主性だけでは、万が一のことに対して行動するのには不十分。リスクマネジメントの観点からも、主体性は重要なファクターといえます。
主体性のある社員、ない社員
ここまでは、主体性の定義と、主体性が企業で必要な理由をお伝えしました。ここでは、主体性のある社員とない社員の特徴を見ていきましょう。
まず、主体性のある社員の特徴は以下のとおりです。
- ・目的意識、目的思考がある
- ・自責思考、責任感がある
- ・前向きである
- ・行動力がある
逆に主体性のない社員の特徴は以下のとおりです。
- ・言われてから(指示を出されてから)しかやらない
- ・言われたこと以上のことはやらない(責任を持ちたくない)
- ・言い訳や保身が多い
主体性のある社員に責任感がある理由は、主体性のある社員が「自分で選んで行動している」「自分で考えて物事を進めている」からです。前述したように、自律性(自ら選択しているという感覚)があるからこそ、自分の言動についての責任感が芽生えやすくなります。
一方で、主体性がなく責任感が弱い人は、「指示されたから」「やらされている」などの気持ちで仕事をしていたり、失敗したときには他者のせいにする(他責思考)傾向があります。結果として、周囲からの信頼を得にくい状態を自ら作ってしまっています。
主体性を高める方法
自分に主体性が足りないと感じている場合は、以下のことを実践してみましょう。
- ・判断を他人に任せていることは何かを知る
- ・仕事でもプライベートでも自分で意思決定する頻度を増やす
- ・誰かの決定を「自分ならどうするか」と置き換えて考えてみる
まず、仕事の中で判断を人任せにしていないかを振り返ってみましょう。仕事の進め方や会議での発言のほか、ちょっとした予定を決めることでも、自分で決めているかを考えます。
次に、考えた中で、自分で決めても良い事柄は、率先して動いていきましょう。プライベートで意思決定の頻度を高めるのも手です。
職場での立場によっては、組織の方向性を決めるような大きな決断は任せてもらえないこともあるでしょう。そのような時は、自分だったらどのような判断を下すか・その理由は何かを思考します。
こうして、小さなところからでも自主的に行動することで、主体性が高まります。
主体性を発揮するための3つの要素
では、社員に主体性を発揮してもらうためにはどうすればいいのでしょうか。ここでは、主体性を発揮するために重要な3つの要素をご紹介します。
有能感
有能感は、「自分は能力があって優れている」「社会の役に立つ存在である」という感覚のことを指します。成功体験や他者からの賞賛を得ることで、有能感が高まります。部下の良い面を褒めてあげると、有能感を伸ばしてあげられるでしょう。
一方で、賞賛がなく、できていないことばかり指摘をされる文化の組織の場合は、有能感が醸成されにくいため、社員への接し方には気をつけましょう。
自律性
「自分の言動を自分自身で決めている」「他者からの強制や指示・命令で行なっているのではなく、自分が自分の行動を律している」と感じられることを意味します。自分で考えて決断し、行動する経験を積み重ねることが大切なため、社員にある程度、権限を付与して任せてみることも大切といえるでしょう。
関係性
周囲と良好な関係を築き、共同してものごとを行える状態であることをいいます。他の人と精神的につながっているという感覚や、相互信頼関係を維持しているという実感を持つことでもあります。ここ数年のトレンドワードでもある「心理的安全性」とも類似する要素です。
主体性を発揮するためには、上記3つの中で自律性がもっとも重要だとされています。自発的にものごとを決め、自分の意志で言動を起こすこと、つまり言動を自分でコントロールできることが大事であるという考え方です。したがって、主体性のある社員を育てたい場合、社員にある程度の裁量を与えて、業務内容自体や業務のやり方を自分自身に選択させることがポイントだといえます。主体性発揮のための基本的方針として、まずは自律性が生まれる風土や仕組みを作ることを意識するといいでしょう。
主体性のある社員を育てるためには
主体性を持つ社員を育てるためには、管理職や経営者が社員を信頼して任せることが大切です。関係性の項でもあった「心理的安全性」が保障されていない組織では、部下は「勝手を言ったら怒られる」「ミスをしたら自分のせいにされる」と委縮してしまい、主体性は発揮されません。そのため、いきなり「主体性をもって行動して欲しい」と伝えたところで、言葉だけが先行してしまいます。まずはお互いの信頼関係を構築するところからスタートしましょう。
信頼を構築する3つのポイントを取り入れてみよう
社員と信頼を構築するためには、「相手の話を否定しない」「言葉の本意を汲み取る」「コミュニケーションをとる」の3つが有効です。
何か意見すると否定される環境では、誰も何も言いたくありません。また、社員が管理職や経営者に提案をするときは、緊張してどうしても言葉足らずだったり、知識不足から情報不足だったりします。社員から提案があった際は、粗探しをするのではなく、どうしてその提案をしようと思ったか、何を課題として捉えたのかなど、本意を汲み取るようにしましょう。
また、簡単にできる方法としては、雑談があります。仕事の進め方や考え方、キャリアプランなどについて、言葉を交わす頻度を高めることで、互いに話しやすい関係になっていきます。
信頼関係という土台を作り、提案や発言を否定せずに導くようにすれば、徐々に社員の主体性が育ってくるはずです。根気強く続ければ、それが会社の風土として根付き、自然と主体性の高い人材が育つ環境にもなっていくでしょう。
社員の主体性を高め、これからの時代を生き抜く組織を創っていくためにも、ご自身の会社の社員を観察し今後の育成施策を検討する際の材料として活用いただけますと幸いです。
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