アンガーマネジメントとは?考え方や実践方法を紹介
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更新: 2022.04.25 |公開:2021.09.14
「小さなことでイライラする…」「怒りに任せて相手を傷つけてしまった…」
コロナ禍における環境変化のストレスも相まって、怒りの感情のコントロールに悩む方は増えているのではないでしょうか。
本コラムでは、怒りと上手く付き合う「アンガーマネジメント」について、考え方や具体的な実践方法を紹介します。

アンガーマネジメントとは?
アンガーマネジメントは、怒りの感情と上手く付き合うための心理トレーニングです。
もともとはDV加害者や軽犯罪者に対する矯正プログラムとして、1970年代にアメリカで開発されたと言われており、今では広く一般的に使われています。
ビジネスの現場においては、職場環境の改善や業務パフォーマンス向上のために、アンガーマネジメントの手法を取り入れる企業も多くなりました。
特に部下を持つ管理職には「怒りの感情を適切にコントロールできる力」が求められるため、管理職向けのアンガーマネジメント研修を実施するケースも多くあります。
では、アンガーマネジメントは実際どのように身につけられるのでしょうか。アンガーマネジメントの考え方や、すぐにできる実践方法を紹介していきます。
「何をされても怒らない人=アンガーマネジメントができている人」ではない
アンガーマネジメントができている人と聞いて、どんな人を思い浮かべますか?いつも穏やかで何をされても怒らない人をイメージするかもしれませんが、
これはよくある誤解です。
アンガーマネジメントの目的は「怒らないようになること」ではありません。「あんなに怒らなければよかった」「もっと怒っておけばよかった」など怒りの感情で後悔をしないことです。
大前提としてお伝えしたいのは、怒りの感情は決して悪いものではないということです。怒りは危険から自分の身を守るために必要な、誰もが自然に持っている感情です。一番よくないのは、その怒りの感情を抑え込んで向き合わないことなのです。
怒りの感情と上手く付き合っていくためには、生じた怒りを上手に扱うことに加え、普段からの自分の意識を変えていくのが重要です。
そのためにも、まずは怒りのメカニズムを知り、自分の傾向を正しく認識することから始めましょう。
怒りのメカニズムを知って、自分の傾向を正しく認識する
そもそも、怒りをはじめとする感情はどのように生まれるのでしょうか。
感情が発生するメカニズムを紐解いていきましょう。
感情はコントロールできる
例えばあなたが、「後輩が30分遅れて出社してきた」という場面に遭遇したとします。この時どのような感情を抱くでしょうか?
もしもその後輩が日ごろから態度が悪く、過去に迷惑をかけられたにも関わらずちゃんと謝罪されなかった経験があったとすると、「30分も遅れてきて何してるんだ」と怒りの感情が湧いてくると思います。一方で、それが日ごろから頑張っている後輩で、前日に体調が悪い中遅くまで仕事している様子を見ていたとすると、不安や心配などの感情が先行するのではないでしょうか。
このように感情とは、ある事象が起こったから湧き上がるのではなく、その事象に対して自分が「意味づけ」を行うことで発生するものです。同じ場面に遭遇しても全員が同じ感情にならないのは、この「意味づけ」が人それぞれ異なるからです。

発生する事象をコントロールすることはできませんが、事象に対する「意味づけ」は自分の中で完結するためコントロールができます。即ち、感情もコントロールできるのです。
怒りが生じるのはどんな時
怒りの感情はどのようなときに生まれるかというと、自分の願望・期待とギャップが生じ、思い通りにならなかったときです。
願望や期待は、「~するべき」「~であるはず」という価値観とも言い換えられます。
先ほどの後輩が30分遅刻してきた例を取り上げると、「特別な事情なく、会社には遅れるべきではない」+「態度が悪い後輩のことなので、特別な事情などないはずだ」といった自分の中の価値観が先行した結果、怒りが発生していると考えられます。
この「べき」「はず」は人によって異なるため、まずは自分の中で当たり前に持っている価値観を認識することが必要です。 その上で価値観の許容範囲を広げていくのが、不要な怒りを生じさせないポイントです。
あなたの怒りは何タイプ
自分の中の「べき」「はず」を認識するとともに、自分の怒りのタイプを知ることも重要です。どのような場面でどのような怒りが表れやすいのか、人それぞれ傾向があると言われています。日本アンガーマネジメント協会が公表している怒りのタイプでは、以下の6つに分類されます。
- ①曲がったことが許せない「公明正大タイプ」
- ②何事も白黒つけたい完璧主義者な「博学多才タイプ」
- ③自分を曲げない頼れるリーダー「威風堂々タイプ」
- ④穏やかな外見の中にも譲れない信条がある「外柔内剛タイプ」
- ⑤用心深く衝突を避ける「用心堅固タイプ」
- ⑥思ったことをストレートに表現する「天真爛漫タイプ」
以下サイトから無料で診断できるため、ぜひ参考にしてみてください。
アンガーマネジメント実践!怒りを抑える方法5選
自身の傾向を把握できても捉え方を変えるのは難しく、長期的なトレーニングが必要です。
ここからは、すぐに実践できる怒りの抑え方をお伝えします。
怒りを抑えるポイントは、心の中に生じた怒りの感情をストレートに態度・行動に表さないことです。怒りが継続するピークは「6秒間」と言われています。この6秒の間に行動すると、どうしても感情的な言葉や態度になってしまい、過度な怒りをぶつけてしまいます。逆に言えば、この6秒が過ぎてしまえば大抵の怒りは落ち着くのです。
以下に、怒りが発生してからの6秒間をやり過ごすテクニックを紹介します。
(1) 思考を停止させる (ストップシンキング)
怒りを感じた瞬間に、すべての思考を止める方法です。心の中でストップ!と呼びかけ、真っ白な何もない空間を思い描きます。思考を強制的に断ち切ることで、怒りの連鎖が防げます。
(2) 心の中で怒りが和らぐ言葉を唱える (コーピングマントラ)
怒りが収まる魔法の言葉を、心の中で唱える方法です。「大丈夫」「たいしたことないな」「明日には忘れるだろう」など、自分が落ち着けそうな言葉をあらかじめ用意しておきます。好きな食べ物やペットの名前など、気持ちが落ち着く言葉であれば何でも大丈夫です。魔法の言葉で心を落ち着かせると、冷静に対処できるようになります。
(3) 怒りを数値化する (スケールテクニック)
怒りの度合いを、10段階評価などで数値化する方法です。数値化することに意識が向くと、自分の怒りの感情を客観的に見ることができます。数値化した結果、実はたいした怒りではなかったと気がつく場合もあります。
(4) まったく別のものに意識を向ける (グラウンディング)
怒りが生じたと気づいた瞬間に、まったく関係がない別のものに注目し、意識をそらす方法です。例えば手元のマウスの色や形状に思考を巡らせてみたり、手のひらの皺の数や長さを観察してみたりと、思考を別の方向に変えることで、怒りの感情から距離を置くことができます。
(5) 仕切り直し (タイムアウト)
(1)~(4)のテクニックを用いてもどうしても怒りが収まらない時は、その場を仕切り直すことが有効です。「15分席を外させてください」「一度解散し、後日改めてお時間いただけますか」など、時間を置いて冷静さを取り戻す方法です。怒りが収まらない時には無理に続行せず、仕切り直しましょう。
いかがでしたか。5つの方法はどれも意識さえすればすぐに取り組めるものなので、自分の許容範囲を超えて怒りが生じてしまった時には、ぜひ実践してみてください。
アンガーマネジメントのメリット・デメリット
アンガーマネジメントを身につけることのメリットと、怒らないことで懸念されるデメリットについて紹介します。
特にデメリットは、前もって知っておくことで、予防策が立てられるでしょう。
アンガーマネジメントのメリット
アンガーマネジメントで怒りをコントロールできるとどんなメリットがあるのかをまとめました。
自己分析ができるようになる
アンガーマネジメントでは、自分がどんな場面で怒りを感じるかを把握しておきましょう。
正義感が強い・完璧主義的な面がある・思ったことを素直に伝えたいタイプ、などです。
客観的に自分を捉えるクセがつくと、怒りだけではなくさまざまな場面で自分がどう振る舞う人間かが見えてくるでしょう。良い面や悪い面などを自己分析できるようになれば、伸ばしたいスキルや不足している経験などもわかります。キャリアやポジションの形成にもプラスに働くはずです。
人間関係のストレスが軽減する
怒りをコントロールできることで、対人関係のストレスが少なくなります。怒りの感情を抱いて発散してしまえば、
自分自身も怒りのストレスにさらされますし、怒られている側もストレスを感じます。
アンガーマネジメントで怒りを抑えることで、自分や相手にかかるストレスが減れば、人間関係も良くなるはずです。
風通しの良い働きやすい職場環境にもなっていくでしょう。問題となっているパワハラの減少にもつながります。
思考の幅が広がる
怒りが生じるのは、「怒りが生じるのはどんな時」で、自身の価値観と現実に起きた事象のギャップであると説明しました。
そのギャップが生じないように、価値観や思い込みといった枠組みを広げていきます。
事象を多角的に捉えることで価値観を広げていくのがアンガーマネジメントの方法ですから、思考の幅が広がり柔軟な考え方ができるようになります。
アンガーマネジメントのデメリット
アンガーマネジメントを身につけるまでにはどうしても怒りの感情が爆発しそうになることもあるでしょう。 では、「怒らない」ことで生じるデメリットとは何でしょうか。
怒りを無理に抑えようとしてしまう
「怒り」という感情は、本来備わっている感情です。また、怒りが生じる背景には自分でも見えていない欲求が隠れていることがあります。
「怒ってはいけない」と怒りの感情に蓋をしようとしてしまうような方法をとってしまうと、欲求を無理やり抑え込むことにもなるため、心と体のバランスを崩してしまうかもしれません。
すぐできる実践方法を用いて心を落ち着かせたら、怒りが生じた背景を考えてみましょう。
都合よく扱われてしまう
嫌なことをされたり、理不尽な要求をされたりしても怒れない・NOと言えないと、相手の行動がエスカレートする可能性があります。
仕事であれば、キャパシティを超えた仕事量をこなせと言われる、希望していない仕事しか回ってこないと言ったことが考えられます。
感情任せに怒ることは難しくても、論理的に伝えたり、上司を通してNOを伝えてもらったりなど、できる方法を考えてみましょう。
感情のエネルギーが湧かない
人によるのですが、怒りを原動力にして頑張れるタイプの場合、怒らないようにすることでエネルギーが湧いてこなくなる可能性があります。もともと怒りを良い方向のエネルギーに変えられるタイプであれば、アンガーマネジメントによってより小さな怒りでも高い推進力に変える方法を身につけると良いでしょう。
一人ひとりがアンガーマネジメントを身につけ、よりよい職場環境をつくろう
一人ひとりがアンガーマネジメントを身につけることは、職場環境の改善にも大きく貢献します。
アンガーマネジメントを身につけ、怒りの感情と上手く付き合えるようになると、人とのコミュニケーションがスムーズになります。
怒りは周囲に伝播する性質も持っているため、周囲の人にも悪影響を及ぼします。コミュニケーションが取りやすい良い環境づくりのためにも、アンガーマネジメントを取り入れてみませんか。
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