【連載】今どきの新人・若手社員の育て方 第2回:忍び寄る思考力低下のリスク、その解消法と向上のポイントとは?

published公開日:2020.01.07
「今どきの新人・若手社員の育て方」を検証する本連載。第1回では、新人・若手社員の意識の変化や、スマートフォンやタブレットの普及といった社会環境の変化がもたらす「思考力低下」のリスクをお伝えしました。今回は、このリスクを解消し、思考力を高めていくために必要な要素を探ります。

放置していませんか? 「思考力低下」のリスク

スマートフォンやタブレットの普及によって、インターネット経由の情報インプットが主流となっている昨今。前回のコラムで、インターネットには「いつでもどこでも情報が得られる」「パッと見で内容が理解できる」などの特長がある反面、情報インプットをインターネット"のみ"に頼るリスクとして、思考力が低下してしまう可能性を指摘しました。

ここでいう思考力とは、「現状を正しく認識する、本質的な課題を把握する、最適な解決策を検討するなど、様々な行動の土台として必要になる力」のこと。会議やミーティング、書類やメール作成、プレゼンテーション、面談など、様々な場面で求められるスキルが思考力です。仕事を進めるうえで必須のスキルですから、思考力低下のリスクを放置しておくと、社員の成長スピードだけでなく、仕事そのものにも影響が出てしまうかもしれません。

特に、小さい頃からスマホ・タブレットに親しみ、"デジタルネイティブ"世代とも呼ばれる昨今の新人・若手世代にとって、インターネットを通じた情報インプットは当たり前。そこに潜むリスクを頭に入れ、早い段階から思考力を向上させる取り組みを実施していくことが、成長を加速させるカギとなります。

では早速、新人・若手社員の思考力向上に有効な教育・育成手段を考えていきましょう。

「思考を伴う情報インプット」の習慣化がリスク解消の第一歩

前回のコラムでお伝えしたように、情報に触れた後の「解釈→思考→理解」という思考のプロセスを踏まないことに思考力低下の原因があるのだとしたら、「思考を伴う情報をインプットする習慣」をつけさせることがリスク解消の近道です。
日々の行動の中で、インターネットだけでなく、「思考のプロセスを踏む必要のある情報」が多い媒体を通じて情報をインプットすることを習慣化してもらい、インプットした内容について"考える"機会を与えるとよいでしょう。

例えば、「新聞やニュースなどの話題を日常的に振る」「上司が読了した書籍の内容を紹介する」などの促しを意図的に行い、インターネット以外の情報インプットも"当たり前"なんだという状態を築くことが第一歩。

「新聞・ニュースの話題を振る」を例に挙げると、
上司:「昨日の△△のニュース見た? うちの会社の〇〇に関係するんじゃない?」
といった投げかけを通じて、思考のきっかけをつくることも一手です。

同じように「書籍の紹介」でも、
上司:「今話題の□□、面白かったよ。〇〇についての記述がうちの会社の△△に使えそうだから、読んでみたら?」
などと具体的に提案し、その書籍に興味を持ってもらうとよいでしょう。本を読むことへの意義づけとなり、「学ぼう」という意識がより生まれやすくなります。

また、ある程度の強制力を持たせられるなら、「課題図書を設定」し、書籍からのインプットの習慣を身につけさせることも有効です。皆さんにも経験があるかもしれませんが、本を読むことに慣れていないと、読書は"苦痛な作業"になってしまうことも。"まえがき"だけ読んで断念...ということにならないよう、「入社後1年間は毎月1冊読む」など、早いうちから習慣化させることが大切です。

情報をインプットしたら必ずアウトプット、そのポイントは"見える化"

ここまで、「思考のプロセスを踏む必要のある情報」が多い媒体からのインプットを習慣化させる方法をお伝えしました。
しかし、この行動が"当たり前"になっても、「インプットした内容について考える習慣」が伴われなければ、肝心の思考力"向上"までは期待できません。

そこで必要となるのが、情報の"アウトプット"。インプットした情報をアウトプットするには、情報をきちんと整理し、自分自身の考えをまとめなければならないため、おのずと「思考」のプロセスを踏むことになるため、アウトプットの機会を意識的に設けることが効果的です。

ただし、アウトプットに当たっては、同僚や上司に話すといった音声でのアウトプットではなく、紙に書いて可視化、つまり"見える状態"にすることがポイント。音声でのアウトプットは論理構造を表すのに向いていないといわれるように、理解・解釈がまとまっていなくても話せてしまうものです。しかし、文字にすることであいまいな点や理解がまとまっていない点を把握することができ、そこからさらに思考して正しい解釈につなげるという行動が生まれます。

まずは「考える習慣をつける」、そして「思考の結果を文字にする」、それをベースに人に説明して意見をもらい、「思考の検証を積み重ねていく」。このサイクルを回すことで、思考力は高まっていくのです。

思考力向上は一日にしてならず、早いうちから対策を!

思考力向上のヒントをつかんでいただけましたでしょうか。ここでもう一つお伝えしたいのが、思考力向上のポイントがわかっていても、長年培った"思考の癖"は短期間で変えられるものではなく、また、思考力は急に高まるものではないということ。「大きなプロジェクトにアサインされた。戦略を立てるために思考力を磨こう」と取り組みを開始しても、思考力が高まるころにはプロジェクトが終わっている...そんなことにもなりかねません。そのため、上司や先輩の方々が、「早い段階から」「日常的に」思考の習慣を身につけさせるための促しを実行することが何よりも大切です。

そして、ここでご紹介した思考力向上への取り組みは、新人・若手社員だけでなく、本コラムに目を通していただいている皆さんにも実行してほしい内容でもあります。本コラムを参考に、新人・若手社員の成長を促しつつ、全社レベルでの思考力アップにお役立ていただければ幸いです。

最終回となる第3回は、労働時間が短縮傾向にある中、高効率な教育を実現し、新人・若手社員の成長を加速させる方法をお伝えします。