新入社員は昔と違う?それとも同じ? 新入社員教育を考える

published公開日:2017.08.24
将来は転職するかも…と考える新入社員が増加傾向にある中、いかに「与えられた仕事に執着し成果を出す」という意識のスイッチを入れるかが新入社員教育の最重要課題です。今回のコラムでは、近年の新入社員の傾向や彼らを取り巻く環境を踏まえ、上司・人事部が実践したい効果的な教育方法をご紹介します。

「3年で3割の離職率」は今に始まったことではない!?

新入社員が入社して間もなく半年。皆さんの会社でも、各部署に配属された新入社員たちが、先輩の指導のもと日々の業務に奮闘しているのではないでしょうか。

新入社員は昔と違う?それとも同じ? 新入社員教育を考える 「3年で3割の離職率」は今に始まったことではない!?|人材育成コラム_4

「新入社員が3年持たずに辞めてしまう...」。これはよく耳にする話ですが、「3年で辞める」のは近年の傾向ではなく、昭和の時代から続いていることをご存知でしょうか。厚生労働省のデータによると、大卒者の卒業後3年以内の離職率は1987年(昭和62年)卒が28.4%、その後は2004年(平成16年)卒の36.6%をピークに、2013年(平成25年)卒が31.9%という調査結果が出ています。

このように、「3年で辞める社員が3割」は昔から変わらない傾向であると言うことができますが、新入社員の仕事やキャリアに対する意識は時代によって変化しています。様々な企業や団体が新入社員の意識調査を実施しており、例えば、2000年度の新入社員には、「転職を容認する傾向が強まるものの、積極的な転職志向は下がっている」という傾向があり※1、2010年度には「今の会社に一生勤めようと思っている割合が過去最高を更新」という結果が出ています※2

最近の新入社員は執着しない?数字に表れない質の変化

当社でも毎年、新入社員研修の受講者を対象に、キャリアに対するアンケート調査を実施しています。その結果から見えてきた今年の新入社員の特徴は下記の4つです。

  • (1)今後のキャリアをはっきりと考えていない新入社員が増えている
  • (2)今の会社で働き続けたいという新入社員は2年連続で減少
  • (3)上司にリーダーシップを求める新入社員は減っている
  • (4)プライベート優先で、定時に帰りたい新入社員が増えている

上記の(3)(4)は他の調査結果でも示されていますが、女性活躍推進や働き方改革などの影響もあり、新入社員だけでなく世の中の動きとしてのリーダーシップの在り方や残業を前提とした働き方の見直しが反映されていると考えられます。ただ、(1)(2)の結果からは「今の会社・仕事に執着してしっかり成果を出す」という意識が希薄になってきていることが伺え、人事部や直属の上司はこの傾向をきちんと踏まえた上で新入社員と接することが求められます。「3年で3割」という傾向は変わらないかもしれませんが、数字には表れない質、つまり新入社員が業務に向かう姿勢は確実に変化してきているのです。

このほか、最近の新入社員は「失敗を恐れる」「答えがないと動けない」といったこともよく聞かれます。検索エンジンやスマートフォンなどの普及を背景に、デジタルネイティブ世代は「まずは調べてから動く」という習慣が定着しています。そのためか、「業務に当たる前に関連する知識を事前に知っておきたい」「先に教えてほしい」というように、「答え」を求める傾向も高まっているようです。

脱放任型とモバイル活用で新入社員を早期戦力化

このような新入社員の傾向を踏まえて、新入社員の早期戦力化に向け、上司がすべきこと、人事部がすべきことを考えていきます。

新入社員教育の目的は、社会人としての軸をつくるのはもちろん、上述した傾向を踏まえ「今の会社・仕事に執着して成果を出す」スイッチを入れることです。そのため、即戦力となることを期待して「知識を詰め込むだけ詰め込んで現場に投入する」というようなスタイルでは、新入社員の心を会社から遠ざけてしまうことになりかねません(参考コラム:「魅力的なキャリアとは?キャリアの提示が会社への愛着にも影響」)。新入社員の「事前に知りたい」に応え、成果を上げてもらうためには、上司、人事部が次の点に気を付けて教育・指導を行うことが大切です。

上司の皆さんは、放任型の指導、すなわち「仕事は自分で見つけるもの」「そんなことまで教えなくてもよい」ではなく、仕事を進める上で必要な知識を、想定される事態とともにインプットし、一緒に行動計画を立てることを心掛けると良いでしょう。場合によっては手本を見せる、一つ一つの段階で細かく指示を出すことも必要で、何か課題を与えたら必ずフィードバックし、その内容を実践させることも忘れてはいけません。

また、研修をはじめとするOff-JTを実施する上で、人事部の皆さんには、デジタルネイティブ世代を意識した教育方法を取り入れることをお勧めします。例えば、当社のサービス「Mobile Knowledge for Freshers」では、約200のコンテンツを提供し、スマートフォンを通じて入社前から様々な知識をインプットすることができます。慣れ親しんだデバイスを使いながら、場所・時間を選ばず「事前に知る」ことができるため、最近の新入社員の傾向にマッチし、多くの企業・受講者からご好評をいただいています。

本コラムでは、最近の新入社員の傾向を踏まえ、上司、人事部がそれぞれの立場ですべきことをご紹介しましたが、上司任せ、人事部任せにするのではなく、「組織全体で育てる」という意識を持って教育に取り組むことが、新入社員の早期即戦力化への近道です。