ファシリテーション|無駄な会議と言わせない技術
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公開:2021.12.24
“無駄な会議”を減らし、“有意義な会議”を生むために必要不可欠なのが「ファシリテーション」スキルです。ファシリテーションスキルは、会議やワークショップなどを円滑に進められるスキルであることから、若手~管理職、役員クラスまで様々な階層で必須のスキルです。本コラムでは、ファシリテーションスキルを5つのプロセスに分け解説。明日から使える具体的な手法も交えご紹介します。

有意義な会議にするためにはファシリテーションスキルが必要不可欠
せっかく会議に参加するために時間調整をしたのに「ただ長いだけで何も決まらない」「積極的に意見を言う人は一部の人だけ」「時間をかけて作った資料がほとんど使われない」というような"無駄な会議"を経験したことがある方も多いのではないでしょうか?
業務が忙しい中、時間を割いて会議に参加するのならば、決められた時間内で偏りなく様々な人が意見を出し、参加者の合意が取れているような有意義な会議にしたいものです。
このような"有意義な会議"と"無駄な会議"を生みだす要因はどのようなことが考えられるでしょうか?
先に結論から言うと、この違いは会議司会者/進行役のファシリテーションスキルの有無によって生まれます 。
ファシリテーション(Facilitation)スキルとは、会議やワークショップなどを円滑に進められるよう支援をするスキルのことです。
会議や研修、ワークショップなどで進行役を担う機会は若手から管理職、役員クラスまで様々な階層で発生するため、
ビジネスにおいてファシリテーションスキルは必要不可欠な能力と言えるでしょう。
ファシリテーションの5つのプロセス
ファシリテーションは正しいプロセスに沿って進めると必ず上達します。
無駄な会議にしないためのファシリテーションプロセスは、以下の5つがあげられます。
- 1.事前準備
2.場づくり
3.発散
4.論点整理と合意形成
5.まとめ
1.事前準備 | ファシリテーションの正しいプロセス
会議の時間とメンバーを決めてWEB会議のURLを送付する。あるいは会議室を抑え、会議招集を行う。
この準備だけでも会議を行うこと自体はできますが、事前準備としては不十分です。
上記以外に目的とゴールの設定、アジェンダの作成、資料や道具の準備も必要です。資料は自分で作成するのか、誰かに作成依頼をするのかによっても大きく変わります。
例えば、営業会議の事前準備について考えてみましょう。
- ・目的:前年比120%の売上を上げる戦略を考えるため
- ・ゴール:明日から行動できる営業アクションを最低3つ決める
- ・アジェンダ:①先月の振り返り ➁改善すべきことと継続すべきことの共有
③明日から行動する営業アクション3つを検討し決定 - ・日時:20●●年▲月■日(月)14:00~15:00
- ・参加者:東京支社のメンバー10人全員
- ・会議の方法:WEB会議システム URL:●●●
- ・資料:拠点長に作成依頼をする
- ・その他準備:アジェンダの➁で共有する改善するべきことと継続すべきことを3つずつ考えてくる。
このように、会議実施前には必ず事前準備をすることで会議をスムーズに行うことができます。
さらに具体的な内容に落とし込むと、以下のようなことも考えることができます。
- ・誰が議事録を取り、いつまでにどう共有するのか
- ・売上が好調な他拠点が実施しているアクションの情報を集める
- ・出た意見をわかりやすくするためにホワイトボードを準備する
無駄な会議ではなく、有意義な会議にできるかは、事前準備の段階で決まっていると言っても過言ではありません 。
2.場づくり | ファシリテーションの正しいプロセス
せっかく事前準備が整っていても、参加者の顔色を見て、だれも発言しなければ、無駄な会議になってしまいます。有意義な会議とするためには、会議に参加する全員が意見を出しやすい雰囲気を作ることが重要です。
意見を出しやすくするためのポイントは2つあります 。
1つ目はグランドルールの設定です。グランドルールとは、その会議において適用されるルールのことです。
意見を出しにくい場の例として、「上司や先輩に気を遣いながら発言をしないといけない」というポジションパワー(職場での力関係)がはたらいていたり、「発言に対して否定をしたり、話を遮ったりする人がいる」というケースなどがあります。このような状況下では本音で話すことができなくなるため、事前にグランドルールを設定することが効果的なのです。
- グランドルールの例
- ・1年目から拠点長までフラットに発言できるようにポジションパワーは使わない
- ・意見を否定しない、話は最後まで聞いてから意見を述べる
若手社員が会議で本音の意見を述べることは、中堅・ベテラン社員が思っているよりも勇気がいることです。
若手が積極的に発言しやすいような場づくりをすることが大切なのです。
意見を出しやすくするための2つ目のポイントはアイスブレイクです。
初対面のメンバーが参加している会議などでは、
冒頭からいきなり議題に入るのではなく、まずは自己紹介をさせるなど、本題とは違う話題を通じてお互いを知るきっかけづくりを行い、緊張をほぐすことも大切です。
3.発散 | ファシリテーションの正しいプロセス
発散とは一言で言うとアイデアを出し合うことです。
会議は、事前に準備してきた各々の意見や考えを共有するだけが目的ではありません。
参加者がその場でアイデアを出し合う、各々の準備してきたアイデアを組み合わせることで、新しいアイデアが見つかることもあります。
発散を活性化するための方法は、
- ・参加者全員が付箋にアイデアを書き、グルーピングしていく
- ・一人ずつアイデアを出し、ホワイトボードにまとめていく
- ・WEB会議のホワイトボード機能を活用し、匿名でアイデアを出す
などのように様々な手法がありますが、参加者の属性や会議の目的・ゴールなどからどの方法で発散するのかを選択するとよいでしょう。
発散のプロセスでは質よりも量を重視し、自由にアイデアを出せるようにファシリテーションすることが大切です。参加者に発言ではなく紙に書かせてアイデアを出させることにより、初動が早かったり声が大きかったりする人の意見のみが採用されることを防ぐことができます。
4.論点整理と合意形成 | ファシリテーションの正しいプロセス
ファシリテーションを行う上で、最も難しいと言えるプロセスです。
論点整理と合意形成とは、発散によって出た多数のアイデアのポイントを明確にし、参加者の意見の一致を図り、まとめへと導くことです 。
このプロセスが抜けてしまうと、せっかく場づくりをして、アイデアを出したが、「発散して面白い会議だったね」という感想は出るものの、次のアクションにつながらず、「無駄な会議」と認定されてしまいます。
論点整理を感覚的に行ってしまうと自身の思考に偏ってしまうことが多いため、以下2種類のフレームワークを活用することをおすすめします。
論点整理に使えるフレームワークの1つ目はメリット・デメリット法です。
アイデアのメリットとデメリットを書き出し、比較する手法で、アイデアの数が少ない場合の論点整理におすすめです。
先ほどの前年比120%の売上をあげる戦略を考えるための営業会議で考えると、
- アイデア①:週1回1時間の勉強会を開く
- メリット:営業力の向上につながる
- デメリット:営業活動にあてる時間が1時間短くなる
- アイデア➁:外部の営業コンサルティング会社を活用する
- メリット:客観的な視点で営業プロセスを見直すことができる
- デメリット:コストがかかる
このようにそれぞれのアイデアのメリットとデメリット を並べることで比較しやすくなります。
2つ目のフレームワークはペイオフ・マトリクスです。
ペイオフ・マトリクスは、「成果/効果」と「難易度/実現性」という2軸の評価基準を設定し、複数の案をマトリクスに落とし込んで 比較する手法で、アイデア数が多い場合の論点整理におすすめです。

以下2つの例で"成果"と"難易度"の評価軸で考えてみましょう。
- 例1)週1回1時間の勉強会を開催する
- ・成果「小」:勉強会を開催してもすぐに成果にはつながりにくいため
- ・難易度「低」:コストをかけずにすぐ始めることができるため
- 例2)外部の営業コンサルティング会社を活用する
- ・成果「大」:営業のプロからアドバイスがもらえるため
- ・難易度「高」:コストがかかり、社内で稟議を通す必要があるため
このように複数の案が出ている場合には、成果と難易度という2つの軸で各案をマトリクスにプロットして比較をすることで、 客観的な評価基準をもとに有力なアイデアを絞り込みやすくなります。
客観的な評価基準をもとに論点整理がうまくできれば、参加者の理解を深めることができ、最終的な合意形成をしやすくなるのでおすすめです。
5.まとめ | ファシリテーションの正しいプロセス
会議での決定事項やタスクを確認し、会議を締めくくります。会議をまとめる際のポイントは、決定事項のみを確認するのではなく、その決定事項は参加者全員で合意の上決められたことだ、ということをしっかりと参加者に再認識させることです。それに加えて、タスクが発生した場合には、誰がいつまでに実行するのかを明確にし、タスク推進者に再認識をさせることもポイントです。
これにより、会議で決定した事項の遵守率が上がり、より"有意義な会議"とすることができます。
うまく発言できない人への発言促進もファシリテーターの役目
ファシリテーションの5つのプロセスで会議を進めることで、参加者全員がうまく発言できればよいですが、参加者によっては発言が苦手というメンバーもいることでしょう。
ファシリテーションを行う際に、参加者に発言を促進するスキルも大切です。
発言促進のコツは傾聴、質問、記録です。
- 傾聴(けいちょう)
発言者は、他の人がしっかりと話を聞いてくれていると感じると発言しやすくなるため、
あいづちや復唱をすることで安心感を与えます。 - 質問
「はい、いいえ」で答えられるクローズドクエスチョンや「勉強会についてどう思いますか」のように
相手が自由に答えられるオープンクエスチョンなどを使い分けて意見を引き出します。 - 記録
一人ひとり一人の意見をホワイトボードなど、 参加者が見えるところに記録を残すことで、
自身の発言は受け止めてもらえる場なのだと認識されます。
これにより議論への参加意欲を高めることにつながり、結果として発言の促進につながります。
またゼロから意見を考えることが難しい人であっても他の参加者の発言がホワイトボードなどに
示されていれば、それに対する感想など自身の意見を述べやすくなります。
いかがでしたでしょうか。
今回は主に無駄な会議と言わせないためのファシリテーションについて、5つのプロセスに分け解説しました。 会議以外でも大人数が参加する商談やウェビナー、勉強会など様々なビジネスシーンでファシリテーションスキルは必要です。
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