ヤマハ様 講師派遣型研修 導入事例
「部門を巻き込み、全社を挙げて新人・若手を育てる」
‐ゴールの明確化とアセスメント活用で実現した若手育成改革の軌跡‐|事例

ヤマハ株式会社 様 
  
創業
:1887年
事業内容
楽器事業
  • ピアノ、電子楽器、管・弦・打楽器等の製造販売等
  • 音響機器事業
  • オーディオ、業務用音響機器、情報通信機器等の製造販売
  • その他
  • 電子部品事業、自動車用内装部品事業、FA機器事業、ゴルフ用品事業、リゾート事業等
従業員数
20,203名(2020年3月末時点)
本社
静岡県浜松市中区中沢町10-1
企業サイト
https://jp.yamaha.com/
2018年に新人・若手社員の教育体系の改革に踏み切ったヤマハ株式会社。そのパートナーとして当社をお選びいただき、共に取り組みを進めてきました。改革の背景にはどのような課題があり、どう解決していったのか。同社人事部人材マネジメントグループの黒田泰広様、ヤマハグループ全体の人材育成を支える株式会社ヤマハコーポレートサービスHR事業部の亀川敬之様、浮田千晶様に伺いました。
*新型コロナウイルス感染防止のため、インタビューはオンラインで実施いたしました
*所属はインタビュー時のものです
ヤマハ株式会社 黒田泰広 様
黒田泰広 様
ヤマハ株式会社
人事部人材マネジメントグループ
株式会社ヤマハコーポレートサービス 亀川敬之 様
亀川敬之 様
株式会社ヤマハコーポレートサービス
HR事業部
株式会社ヤマハコーポレートサービス 浮田千晶 様
浮田千晶 様
株式会社ヤマハコーポレートサービス
HR事業部
以下、敬称略
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インタビューのサマリ

若手育成見直しのきっかけ

  • ・長年、新入社員研修の内容が変わっていなかった
  • ・知識詰め込み型の研修によって、実践につながりにくい研修になっていた

若手育成見直しの効果

  • ・OJTとOff-JTの接続で、実践につながる教育体系を構築できた
  • ・全社を挙げて新人・若手社員を育てるという風土が醸成できた

「全然覚えていません!」
その一言が、長年変わらなかった研修を見直すきっかけに

- 本日はよろしくお願いします。
まずは、御社の事業や、事業を推進していくうえでの人材育成の位置づけについて教えてください。
【黒田】

オルガンの修理をきっかけに1887年に創業した当社は、そのちょうど100年後、1987年に「ヤマハ株式会社」に社名変更しました。現在、ピアノや電子ピアノ、管楽器といった楽器事業を軸に、音響機器事業や部品・装置事業などを展開しています。

当社では従来、社員一人ひとりの個性や創造性を尊重し自己実現できる企業風土を目指すという、"人"を重視した経営に注力しています。その中でも、新人・若手社員の育成においては、入社3年目までの期間を若年層と位置づけ様々な施策を実施。社会人、そして"ヤマハ人"として活躍するための基礎を固める期間として、若年層教育の充実を図っています。

画面キャプチャ
- 2018年に新人・若手社員の教育体系の見直しに取り掛かり、当社も様々なサポートをさせていただきました。
なぜ、そのタイミングで改革に踏み切ったのでしょうか?
【亀川】

私は今から3年ほど前、2017年に人材育成の担当になったのですが、その時に、これまでどんな新入社員研修が行われてきたのかを調べてみたんです。そうしたら、長年にわたって毎年同じことを繰り返していることがわかりました。新人の価値観や考え方、そして世の中の状況も刻一刻と変わる中で、昔と同じことをやっていても意味がない、そう思い抜本的な見直しに踏み切りました。


【黒田】

それに当社の新入社員研修は従来、研修でたくさんの知識を詰め込んで、研修後は現場での教育に委ねるというスタンスで行っていました。それがある時、1人の役員から「新入社員が(研修の内容を)全然覚えていません!って笑いながら言っていたけど、大丈夫なの?」と言われてしまい...。それがすごく衝撃的で悔しくて。改めて振り返ってみると、人事と各部門の役割分担が曖昧で、現場の巻き込みが弱かったと感じています。研修全体の一貫性も乏しく、本当に課題山積の状態でした。


- 課題がどんどん出てくる中、まずは何から変えていったのですか?
【黒田】

今の新人・若手社員の特徴を考慮しながら、「明確な育成ゴールの設定」「インプットとアウトプットの繰り返し」「成長実感の見える化」の3つを改革の柱に据え、育成サイクルの仕組み化を目指しました。

また当時は、新入社員研修だけで5~6社にお願いして様々なプログラムを実施していたのですが、教育に対する考え方は各社様々です。研修の一貫性を担保するには、パートナーを集約した方がうまくいくのではないかと考え、1社に絞るという決断も下しました。研修に限らず、1社に集約するというのは、非常にチャレンジングでリスクを伴うものです。いくつかの会社に話を聞き、人材育成の考え方やコンセプト、プログラム内容、研修講師の質など、複数の観点で選定を行いました。中でもラーニングエージェンシーさんの考えやご提案内容は、我々が大切にしている教育思想と非常に近かったことから、ここなら大丈夫、そう感じて御社にお願いすることにしました。



- 当社では、実践と改善を繰り返してあるべき姿を目指し、さらに本人だけでなく、OJT担当者や上長も含めた階層連動施策を取り入れた育成を推奨していますので、その点を評価いただいたということですね。

現場ごとに違う「来年はこうして!」にまどわされない
研修改善の根拠になる明確なゴールを策定

- 改革の柱は3つありますが、なぜ「明確な育成ゴールの設定」を第1の柱に据えたのでしょうか?
【亀川】

新人・若手をどう育成していきたいのか、どこに向かって行きたいのか、全社の"共通言語"をつくりたかったというのが一番の理由です。例えば新入社員研修って、全社的に興味関心の高い研修ですよね。興味関心が高いが故に、様々な部門からプログラム改変に向けての要求がある。当時は、その都度その都度対応していたせいで、「何を実施したいのか」が人事部内でも不明瞭になっていました。研修の良し悪しの評価軸、見直しの根拠となる、明確なゴールが必要だったということです。


- ゴールを"どこに""どのように"設定するかは非常に悩ましいものです。
御社ではどう設定していったのですか?
【亀川】

まずは1年目、2年目、3年目と各年次でどのような状態になってほしいのか、年次ごとのゴールを人事制度の役割定義と紐づけて設定し、そのゴールを達成するための能力要件を、「態度」「スキル」「知識」の3領域に整理して策定しました。そして、社内に浸透させるために、人事制度の役割定義という全社共通の指標を使ったほか、知名度の高い「アイスバーグモデル*1」をベースに能力要件を定めていきました。

画面キャプチャ

特に「スキル」に関しては、ラーニングエージェンシーさんと毎日のように意見交換しながら、ヤマハならではの6項目を策定。「聴く力」「話す力」といったわかりやすい項目名にするのはもちろん、「6つの力」というキャッチーな言葉を使うことで全社への浸透を図っていきました。また、内定者・新入社員向けの研修テキストに必ずこの「6つの力」を入れ、繰り返し目に触れるようにしたことで、今では「ヤマハ人として成果を出すために必要な能力」として認知されています。 "あれもこれも"と羅列するのではなく、体系化して見せたことで、より腹落ち感のあるものになったのかなと思っています。


*1   アイスバーグモデル(氷山モデル):人の特性は目に見えている「スキル」や「知識」といったものだけでは判断できず、「動機」「価値観」「性格」など水面下の特性が、目に見えている特性に大きく影響しているとする理論


"詰め込み型教育"からの脱却
そのポイントは現場を巻き込んだOJTとOff-JTのゴールの共通化

- では2つ目の柱、「インプットとアウトプットの繰り返し」でゴールを目指そうと思ったのはなぜでしょうか?
【浮田】

先ほど黒田からもお伝えしたように、当社の新入社員研修は従来、一方的な知識インプットの傾向が強かったんです。しかし、新入社員が一度に覚えられる量はそれほど多くはありません。コップに例えると、小さなコップに一度に大量の水(=知識)を注いでも、結局あふれてしまうということ。それが、研修の内容を「覚えていない」原因にもなっていたと思います。そのため、新入社員のコップの大きさに合った少量のインプットから始め、短期間のうちにインプットとアウトプットを繰り返す。つまり、研修で学んだことをすぐに実践できる場を用意し、それを何度も何度も繰り返すことで「態度」「スキル」「知識」の完全定着を目指しました。

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- 一方的にインプットする、いわゆる"詰め込み型教育"からの脱却に苦労される企業が多いのですが、御社ではどのように進めていったのですか?
【浮田】

以前はOJTが完全に部門任せになっていたため、研修でインプットした知識と現場での実践が一致していないことが多々ありました。そこで、Off-JT(研修でのインプット)とOJT(現場でのアウトプット)のゴールを共通化することで、両者につながりを持たせられる仕組みにすることを意識しました。

またそのゴールを、上長を含めた関係者全員で共有することも徹底しました。例えば、OJTトレーナー向けの研修には所属長にも同席してもらい、育成のゴールや具体的なOJT推進方法、今どきの新人・若手社員の特徴までをレクチャー。さらに、関係者全員が育成状況をモニタリングできる「育成指導計画表」を作成し、それをもとに会話ができる仕組みを整えました。教育体系の改革に踏み切って2年ほど経ちましたが、OJTとOff-JTの接続が強化され、詰め込み型教育からの脱却も進んでいると感じています。

新人・若手の成長は人事にとっての"通信簿"
達成状況をアセスメントすることで、教育施策そのものの効果を測定

- 3つ目の柱である「成長実感の見える化」について、アセスメントツールを導入された背景を改めて教えてください。
【黒田】

過去の感覚的、定性的な効果測定から脱却したかったのが最大の理由です。例えば新入社員研修後に、「今年の新人、元気があって、礼儀も正しくていいね」といったフィードバックをもらうことってよくありますよね。もちろん、研修を通じてマナーを身につけてもらうことは重要ですが、新入社員研修の評価はこれだけじゃないはずです。各部門の方と明確なゴールをもとに会話したり定量的なフィードバックをもらったり、それによって研修の改善につなげ、教育体系を進化させていきたいと考えていました。

そこで当社の体系や育成ゴールに沿ったアセスメントサービスを探していたところ、ラーニングエージェンシーさんから「Biz SCORE Basic(ビジネススキル診断テスト、以下BSB)」をご提案いただきました。また、現場で表出する行動を可視化するための「成長支援シート」の開発もご支援いただき、その2つを使って成長実感の見える化を推進することにしました。

画面キャプチャ
- 複数のアセスメントツールを使うのは運用が大変だと思います。あえて2つのツールを導入したのはなぜでしょう?
【黒田】

成長支援シートで"日々の職場での行動"を、BSBで行動には表れない"頭の中の知識"という性質の違うものを二軸で見ることで、達成状況をより正確に測ることができるのではないかと考えたからです。2つのアセスメントを実施することに対し、当初、人事側からも「負担が大きいのでは?」と戸惑いの声が上がったのも事実ですが、「やってよかった」というのが率直な感想。社内外で通用する社会人基礎力の醸成が育成ゴールであるため、社外の客観的な指標を取り入れる必要もありました。BSBの導入により、客観性も担保できたと思っています。


- 具体的にどのような効果を感じていますか?
【黒田】

当社では、「育成ゴール」の各項目を8段階に分け、2年目、4年目、6年目の区切りで本人と上司がそれぞれ評価し、そのアセスメント結果をベースに人事部との定期面談も実施しています。皆が一緒になって成長につながる取り組みを考えられるようになったのはもちろんのこと、自分自身を客観的に捉える力が強化され、独りよがりにならない自己開発にもつながっていると感じています。

また、この定期面談の結果というのは、われわれ人事部にとっての"通信簿"的な位置づけでもあるんです。これは、新人・若手の成長度合いを見ることで、OJTとOff-JTが有機的につながり、しっかり機能しているか、施策の効果や進捗がわかるということ。研修や教育施策を改善していくうえでの指標にもなります。正直言って、7人の担当者で150人の面談を行うのはかなり負荷が高いことですが、新人・若手の成長を促し、またエンゲージメントを高めていく意味でも、今後も継続してしっかり取り組んでいきます。

教育体系の改革で育成する側の意識にも大きな変化

- アセスメントによって次につながる育成を実現したということですね。改革の成果は他にどんな点に現われていますか?
【黒田】

ゴールの策定から効果測定まで、一貫性のある研修ができるようになったこと、実践を通じてきちんと記憶に残る研修を実現できたのはもちろん、部門を巻き込んで進めていったことで、「全員で新人・若手を育てる」という風土が根付いてきたことが何よりも嬉しい成果ですね。


【浮田】

2020年度の新入社員研修においては、コロナ禍で大幅な変更を余儀なくされましたが、ゴールを明確に定めていたことで、優先順位や実施する研修内容をぶれることなく、スムーズに決めることができました。しっかりとした軸があることで、研修をどう実施していくのか、"How"の部分に重点を置くことができた。これも、教育体系の見直しによって生まれた大きな効果だと思っています。今後もウィズコロナといった時代背景のもと、人材育成においても様々な変化が生じると思いますが、変化に対応しながら育成を進めていけるよう、改善を続けていきます。


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